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ヤングロータスで受賞して、「ヤングコンペって、広告の未来へのヒントだらけじゃん!!」と気づいちゃった話

「ヤングカンヌ」「ヤングスパイクス」「朝日広告賞」「宣伝会議賞」「販促コンペ」…

これを読んでいる方なら聞き覚えがあるかもしれない言葉。広告業界には、あらゆる「若手向けの広告公募コンペ」があります。どうしてもクリエティブがやりたい営業職だった僕は、「たくさん賞を獲って異動してやる…!!」と何度もヤングコンペに挑戦してきました。

そんなコンペのお題は、決まって「クライアントは架空の団体」「予算に上限はなし」「実現可能性はそこまで重視しない」だったりと、実際の業務ではありえないようなお題ばかり。コンペにチャレンジしながらも、結局実務の力はつかない「ごっこ遊び」のようなものなのかな、とどこかでモヤモヤしていたりもしました。

でも、気づいちゃったんです!
「ヤングコンペで使う力って、実際の仕事にも活かせるじゃん。」
……いや、それだけじゃない。
もっと言ってしまえば、
「ヤングコンペって、広告の未来へのヒントだらけじゃん!!」と。

自己紹介

こんにちは。ADK CREATIVE MALLにて​「DESIGN & BRANDING」という​戦略コンセプトを掲げる塚本チーム所属、社会人6年目(クリエイティブ2年目)、ひよっこアートディレクター・デザイナーの高田雄大朗と申します。

そんな僕の自慢を、ちょっとだけ聞いてください! 先月、ヤングロータスで日本代表として戦い、会場審査1位のPopular Voteを受賞することができました。

「ヤングロータス」とは…
アジア太平洋地域の広告アワード「アドフェスト」におけるワークショップ・コンペティション。アジア各国から予選を勝ち抜いた若手クリエイティブのペアがタイ・パタヤに集結し、現地で出題されるオリエンに24時間で企画、プレゼンテーションを行い、アイデアを競う大会。

国内予選で145チームの中から日本代表に選ばれ、本戦で14カ国と戦っての受賞。一緒に出場したペアの安本さんは、僕が就活生のときに採用担当人事をしていました(現在はCMプランナー)。そんな安本さんと大勢の観客に手を振った授賞式は、なんだかドラマチックな気分でした。
(良いことがあるとすぐ調子に乗るタイプなのですが、本当に、運とサポートしてくださった皆様に恵まれたということを強調させてください…)

こんな大舞台に立てたのは初めての経験でした。

そして、2人でワークをする中でよく出てきた言葉、それが「この考え方って、実際の仕事にも活かせるじゃん。」でした。

一夜漬けでつくった道しるべにヒントが

話は遡ること4ヶ月前。
2020年に日本代表に選ばれて本戦出場が決まってから、何もないまま3年が経とうとしていました。そう、コロナの影響で2020〜22年のヤングロータス本戦が開催中止になってしまったんです。

今年に入り、いよいよ本戦が迫ってきたある日。3年も経ったので、僕と安本さんは準備万端
……と言いたいところですが、のんびり過ごしてしまっていました。そうです、2人とも夏休みの宿題は最終日に後回しするタイプなのです。

今回は夏休みの宿題とワケが違う。さすがにまずい!

でもそういうタイプは、追い上げだけはすごいんです。何がなんでも勝たなければ!ということで、図々しくも社内外のクリエイティブの大先輩方に審査員をお願いし、実際に24時間でアイデアを出してプレゼンをする全6回の模擬練習をしました。そこでいただいたフィードバックや、自分たちの気づいたことをまとめ、本戦で迷わないための「道しるべ」としました。

実際に、本戦でアイデア出しをするホテルにはこんな感じで道しるべを貼り出しました。

ここに、「広告の未来へのヒント」が隠れていました。何がヒントになるのか?実際の模擬練習課題とともに、3つの道しるべを紹介させてください。

【道しるべ1】 ターゲットに迫れ!!

模擬課題:
タイ政府観光局が、タイの観光客を増やすにはどうすればいい?
出したアイデア:
タイはマッサージなどリラックスできるアクティビティに溢れる国。そして実は、格安航空のトランジットが多い国。
そこで、トランジット目的でタイの空港を経由した人を、タイのリラックス中毒にしてしまい、このままタイに来ないかと誘ってインターセプトする。トランジッター横取り企画。

入国ゲートに近づけけば近づくほど、もっと激しいリラックスが!気づけば入国している!?

実務では出せないようなおバカ企画なのは分かってます。でも、ちょっと待ってください。ここに大事なヒントが隠れているんです。

このアイデアが出る前、漠然と「ある日突然、自動車の絵文字がトゥクトゥクに変わる」とかどうかな、「微笑みの国だから、微笑んでいない人にチケットを送りつける」とかできないかな、などと考えていました。でも本当にそれで人が動きそうなイメージが湧きません。模擬プレゼンまであと6時間。絶望……。

でも、「トランジットでタイを経由する観光客」という明確なターゲットが出てきたとき、希望が湧いてきました。飛行機に乗ってきてこれからまた別の飛行機に乗らなければいけない彼らは、きっとすごく疲れているはず。そんなインサイトも見えてきて、動く人の姿がくっきりとしてきました。もし時間にゆとりがあったら、入国しちゃう可能性あるかも...とイメージが浮かんできます。

この経験で生まれた道しるべが、「ターゲットに迫れ!!」です。企画が走るイメージが出るように、どんな人がどのように動く想定なのかはっきりとさせるのが大切ということ。

あれ、これって「広告の未来へのヒント」じゃん!! って思いました。
「M1層:20歳~34歳男性」なんてセグメントじゃ到底括れないほどたくさんの価値観や立場が増殖している今、人の心を動かすには、根っこにあるインサイトを捉える必要性が高まっている気がします。その際ターゲットに迫るというスタンスが、インサイトをあぶり出すきっかけになると思ったんです。

【道しるべ2】 視座を上げろ!!

模擬課題:
若者に本を読んでもらうためのグローバルキャンペーンを考えよ
出したアイデア:
若手の社会人って活躍している上司がどんな本を読んでいるか気になる。一方で活躍している上司は決まって忙しく、部下にフィードバックをする時間がない。そこで、会社のフィードバックの代わりに、部下にあった本を渡せる"FEEDBOOK"どいう文化を作る提案。

ブックカバーにコメントを書けます。ブックカバーは、上司がよく読む業界紙や新聞の広告に用紙フォーマットをつけて広げていきます。

この企画が出る前、「上司のおすすめ本を部下に紹介する社内サイト」を考えていました。「成長したい部下」というターゲットを持ち出したことでインサイトも見える。「【道しるべ1】ターゲットに迫れ」は満たせている気がします。でも企画は、「アイデア」と呼べるレベルなのか分からないような、フツーなものに感じました。

企画にグッと魅力が出たのは、「フィードバック」という社内の文脈を持ち込んで、上司から部下に本を送ることを「文化」にしてしまおう、と考えた瞬間でした。これがまさに「視座を上げる」です。

単にオリエン通り「本を読ませる」のではなく、「本を通して文化をつくる」まで広げてみる。するとその文化は会社の外を出て、親子や夫婦や友人にまでも広がっていく未来が見えました

あれ、これって「広告の未来へのヒント」じゃん!! って思いました。
これからの時代、良い商品やサービスを作るだけじゃダメ。その後ろにある想いやストーリーまで見せて共感を得る必要がある。なんて様々なところで言われていますが、そのときに「視座を上げる」という意識が役立つのではないでしょうか。

「この飲み物を売ってください」とオリエンを受けた時、「売れるのはもちろん、愛される方法」まで提案してみる。「うちの会社を盛り上げてください」とオリエンを受けた時、「業界全体を盛り上げて、クライアントさんをその先駆者にする」まで提案してみる。すると自ずと、共感するストーリーが生まれてきそうな気がするんです。

【道しるべ3】 3つの"S"を大切に!!

模擬課題:
鳥インフルエンザ流行の中、某有名チキンチェーン店の売上を上げるには
出したアイデア:
チキンってなかなか映えない。だからSNSで流行している「エンジェルウィングス」のチキンバージョンを作って、映える写真が撮れるスポットを設置。たくさんの飯テロ写真がSNSに上がって、美味しそうと思った人が店に訪れる。その人がまた写真を上げて…という無限ループに。


お店の横に映えるススポット!これなら映えるから写真撮ってSNSにあげたくなっちゃう!?

正直、模擬課題の中で一番自信のないアイデアでした。中身が薄すぎるかも。「やっちまった…」「審査員の方に失望される…」と思いながらプレゼン。しかし予想に反し、全ての模擬課題の中でこのアイデアが一番好評でした。

なぜ良かったのか。それは「シンプル/スマイル/サプライズ」という3Sがあったからでした。(3Sは審査員の方に教えていただいた言葉の受け売りです。) 細かく説明しなくても直感で伝わるシンプルさ、ポジティブに受け入れられるスマイルな要素、パッとみてちょっと気になるサプライズ感。これらが他の案と比較して、最も出せていたものでした。

あれ、これって「広告の未来へのヒント」じゃん!! って思いました。
「情報過多の世の中」と言われて久しいですが、今後もさらに加速していくはず。そんな中、僕たちがふと目を留めてしまうものには、3S(シンプル/スマイル/サプライズ)が隠れているのではないでしょうか。
至って当たり前の話かもしれません。でも、実際の仕事で「オリエンに答えなきゃ」と考えるあまり、このことを忘れてしまう自分がいる気がしました。アイデアは、そのアイデアがどう世の中に伝わるかまで含めて、アイデアなんだと意識することが大切だと思いました。

(ちなみに、「【道しるべ2】視座を上げろ!!」の要素も入れました。鳥インフルエンザで困っているのは、某チキンチェーン店だけではないはず。唐揚げ屋さん、チーズダッカルビ屋さん、水炊き屋さんなど、他のお店の壁にも某チキンチェーン店がエンジェルウィングスを描いてあげることで、企業の姿勢に共感してくれる人を増やす、という展開案です。)

たくさんの道しるべを携えて、いざタイへ!

紹介しきれないのですが、他にもたくさんの道しるべができました。

ところで、肝心の本戦はどうだったのか。続きは…...アドタイで!このnoteとは別の切り口で僕が出国前の準備、そして現地での体験を相方の安本さんがレポートしていますので、覗いてくれると嬉しいです!

AdverTimes『ADFESTの若手コンペに3年越し出場!人事&営業出身コンビの戦い方』
https://www.advertimes.com/20230414/article416310/

DESIGN&BRANDINGと広告の未来

話は変わりますが、「クリエイティブでやっていくなら、よく考えて、自分の見せ方をデザインしなさい」と先輩からアドバイスをもらったことがあります。例えば、どんな服を着て、どんな姿勢で、どんな話し方をするか。それだけで、全く同じものを出しても与える印象が変わってくるからです。Tシャツを着て自信たっぷりにものを語り「荒々しくも頼もしい印象」を与える見せ方もあれば、ボソボソ話すけれど何だかファッションの小物が光っていて「もしかするとすごいことを考えていそうな印象」を与える見せ方もあるかもしれません。見せ方は人それぞれです。

でも、同じ人の見せ方が日によってコロコロ変わったら、この人大丈夫かな…?となんだか不安になっちゃいますよね。これ、我らがチーム長の塚本さんが前のnoteで言っていた「DESIGN&BRANDING」の考え方と重なります。

映像のトンマナひとつとっても、映画のような重厚なトーンなのか、カラッとしたライトなトーンなのか、どちらの世界観にするか。そこもしっかり「デザインする」。メッセージやコピーワークに関しても、短く一言でキャッチーに言うのか、語りかけるように優しく言うのか。それらもしっかり「デザインする」。WEBサイト全体の印象として、色面を効果的に使ってアクティブに見せるのか、白地を活かしてすっきり清潔に見せるのか…などなど、そういった細かな「デザイン」の積み重ねで、そのブランドor企業の“世界観”は出来上がっていき、その世界観次第でその広告コミュニケーションに触れた時に人々に与える印象は大きく変わると思っています。

今時普通すぎる?あえて「DESIGN & BRANDING」というシンプルなコンセプトを掲げた話
https://creativemall.adkco.jp/n/n2b42396b604d

この「DESIGN&BRANDING」という考え方も、「広告の未来へのヒント」じゃん!!と思うんです。コミュニケーションツールが発達して、全国放映のCMはもちろん、地方限定のPOPや、ブランドを作っている企業の社内制度までを、世界中の人が知ることのできるブランド丸裸時代。考え方のブレがバレやすくイメージが崩れやすい時代だからこそ、印象をデザインした一貫性のある見せ方がますます重要になってきそうです。

つまり「広告の未来へのヒント」、まとめるとこうなります。

  • インサイトをあぶり出すべくターゲットに迫り、「誰に」見せるべきか考え、

  • ストーリーを語るべく視座を上げて、「何を」見せるべきか考え、

  • 受け取りやすくなるよう3Sを意識して、「どう」見せるべきか考えてデザインする。

さらに、それをしっかりと積み重ねて一貫した見せ方を作りあげていく

そうすればきっと、一筋縄では人の心を動かせなくなるこの先も、愛される強いブランドや企業を生み出すきっかけを作れるんじゃないでしょうか。

あとは、僕、頑張ります!!

……ひよっこの分際で、だいぶ偉そうに語ってしまいました。

もちろん、事例で出したアイデアは完璧なものではありませんし、ここに書いたことが、広告の未来やDESIGN&BRANDINGの全てだと思っていません。そして、ヤングコンペだけ頑張ったからといって、実際の仕事で成果を出せるわけではありません。(クライアントワークでしか学べない能力ってたくさんあるな…と日々痛感しています。)

でもこのnoteを通じて、過去の自分に「その努力、意外とちゃんと未来で役立つよ」と言ってやりたいですし、僭越ながらもこれからコンペに挑む後輩に「無駄にならないよ」と伝えたかったんです。

そして、未来の自分に「ここまで偉そうに言い切ったんだから、ちゃんと努力しないと笑われるぞ」とケツを叩いておきたいですし…(何せ夏休みの宿題後回しタイプなので)

そんな気分で書いてみました。この先の未来も、ちゃんと頑張りますので、よければ僕にお仕事をください!!

最後に…

この場を借りてお礼を伝えさせてください。

審査員としてたくさんのフィードバックをくださった博報堂の長谷部さん、TBWA\Media Arts LabのPedroさん、CRYSTの八嶋さん、W+K Tokyoの安慶田さん、I&S BBDOの押部さん、社内の藤井さん。いつも客観的なアドバイスをくれた後輩の津軽くん。
業務がたくさんある中、快く送り出してくださった、塚本さん、山本さん、後藤さん、石原さん、上野さん、吉田さん、水本さん、黒住さん。温かく支援をしてくださった辻さん。
そして僕が入社して以来、一緒にコンペに挑戦し続けてくれた安本さん。

……他にもたくさんの方々、みなさまのお蔭で、大変貴重な経験ができました。本当に本当にありがとうございました!!

高田雄大朗(たかだ・ゆうたろう)
1995年生まれ。2018年ADK入社。4年間の営業を経て、2022年よりクリエイティブ職に。ADFEST Young Lotus 2023 日本代表 / 本戦PopularVote、Young Spikes 2023 Finalist、Metro Ad Creative Award 協賛企業賞、宣伝会議賞 協賛企業賞、奈良新聞クリエイティブアド グランプリ、M-1グランプリ2回戦敗退 他。

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