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ひと言化したビジョンと体験で、ファンを育む バイラルエンターテイメント クリエイティブ

 その瞬間、恥ずかしさから顔が真っ赤になった。こんなことは、小学校の担任の先生を「お母さん!」と呼んでしまった時以来かもしれない。
 その日、私は銀座に訪れていた。有名なおしゃれデパートの最上階の本屋さんを目指してエスカレーターに乗ったのだ。前にはおしゃれガールが立っていた。ふと彼女の肩からぶら下がる「エコバッグ」に目がいった。その瞬間だ。顔から火が出るかと思った。なんと、エコバッグに印刷されていた文章が、私、松田伊久磨が書いた「ステートメント」だったのだ。英訳されてはいるものの、自分が書いた文章を不意に目にすると、人はこんなにも恥ずかしくなるのかと驚いた。幸い、クライアントがとても気に入ってくれていた文章だったのもあり、数秒後には嬉しくなっていた。

「そのエコバッグの文章、僕が書いたんですよ。」

 あと2m、エスカレーターが長ければ、私はおしゃれガールに声をかけていたと思う。もう少しで不審者になってしまうところだった。あぶないあぶない。そんな思い出深いエコバッグには、こう書かれていた。

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 おしゃれガールはなぜ、この文章が書かれたエコバッグを肩から下げて、銀座にやってきたのだろう。もちろんデザインの良さはあると思う。ただ、もしかすると、このステートメントから伝わる企業の「ビジョン」に共感してくれたのではないか。銀座での出来事を思い出すたびに、コピーライターの私は言葉の力を信じてしまうのです。

 テレビCMやポスターなどのキャッチコピーを書く仕事をしているコピーライター/クリエイティブディレクターの松田 伊久磨と申します。ここ何年かは広告以外の仕事も増え、日々、様々な言葉と向き合っています。私が戦略畑の出自ということも手伝ってか、上記のようなステートメントやその礎になる「ビジョン」を考える仕事も最近多くなっています。

 「さっきから出てくるビジョンって何?」と思われた方、ご説明が足りずすみません。ビジョン(VISION)とは、「心に描く像、未来予想図」と英和辞典にあります。私はビジョンを像や図ではなく「言葉」で表現するので、「心に描く、未来を予想する言葉」をビジョンと考えます。これをビジネスシーンで使えるように捉え直すと「社会、企業、商品の実現したい未来を、具体的で魅力的に示す言葉」と私は定義します。ビジョンがあるだけで、企業が同じ方向を向き、課題ややるべきことを考えられる。そんな舵取り役の言葉だと思っていただくといいかもしれません。今ブランディング用語で流行しているパーパスも、結論は舵取り役の言葉なので、同じものと捉えるとわかりやすいと思います。ビジョンの定義を少し長く書いたのは、企業のビジョンを調べてみるとわかるのですが、企業の行動規範、社是、社訓だったり、箇条書きや長文になっているもの、抽象的な表現で書かれているものなど様々な表現がビジョンと呼ばれているからです。それらと区別するために、少し長い定義を書かせていただきました。この記事ではビジョンのことを「企業の実現したい未来を、具体的で魅力的に示す言葉」と捉えて、読んでいただければ幸いです。

 今日は、そんな私が手応えを感じている『ひと言化したビジョンと体験で、ファンを育む バイラルエンターテイメント クリエイティブ』について、お話ししたいと思います。

「体験」が伴わないビジョンは、共感されない。口だけの人に、あなたの心は動かないように。

 昨今、企業はビジョンを発表するにも、地球や社会のことを考えて「生活者から共感される未来」を約束しないと企業自体が淘汰されていく傾向にあります。そのためか、最近、大企業からスタートアップまで、ビジョンを刷新したいというご相談が多くなってきました。一方、多くの企業にはビジョンがあるため、その想いや意志を生活者にさらに伝えるために「ステートメント」にしたいというご依頼もいただきます。ビジョンもステートメントも世の中へ発信することで、その企業に勤める社員の方のモチベーションを高めたり、生活者にその企業の実現したい未来を知ってもらえたりするので、とても大切なことだと思います。しかし、私はビジョンやステートメントを世の中に発信するだけではもったいないと感じています。

 大学受験で例えるなら、高校生が「東大に行く」とビジョンを宣言し、その想いをステートメントにして親に伝える。ここで終わってしまっているように思えるのです。実際はビジョンを実現するために、一生懸命勉強したり、遊びやゲームなどの誘惑を断って、努力しているかもしれません。でも、その努力が伝わらないと、口だけで何もしていないと思われる可能性もあるのです。逆に、もし努力する姿が親にしっかり伝われば、食事に気を遣ってくれたり、塾に行く費用を出してくれたりして、応援してくれるかもしれません。だから私は、ビジョンやステートメントを発信するだけではもったいないと思うのです。

 企業には必ずステークホルダーがいます。親のように、企業を見ている人がいる。だからこそ、ビジョンを実現するために行なっていることを、世の中に知ってもらうべきだと思うのです。その方法は様々だと思いますが、私は生活者にビジョンを「体験」してもらうことが最善の方法だと考えています。口だけで何もしない人の言葉に、あなたの心が動かないように、「体験」が伴わないビジョンに、生活者は共感しないと思うからです。

まずは、 ビジョンのひと言化。ビジョンと体験を強く結びつけるために。

 ビジョンを体験してもらうために、私が兎にも角にも行うのが「ビジョンのひと言化」です。
 企業がすでに掲げているビジョンをステートメントに込めて、それを体験してもらう方法もありますが、ステートメントは文章の中に様々な要素を盛り込めてしまうので、伝えたいことが絞りきれず、生活者に体験してもらう施策がブレやすくなります。それでは本末転倒なので、私は、目指す未来を整理するためにも、企業をゼロから知り、ひと言のビジョンにしていくのです。
 例えば、社史を貪るように読んだり、経営者へのヒアリングを行ったり。時には、マーケターの頃のように社員の方とのワークショップを開催したり、調査票を考えて一般の方へのウェブ調査を行ったり。調査から、企業の過去・現在・未来を行き来して、今の世の中を俯瞰して、ビジョンをどうひと言化すれば、生活者の共感が得られるか、その答えを探していくのです。そして最後に、考え抜いたビジョンの良し悪しを判断して、これだ!と思うところまでいったら、ビジョンのひと言化は完了です。

 ちなみにひと言化したビジョンが、いいビジョンになっているかの判断基準は先ほどのビジョンの定義、

「企業の実現したい未来を、具体的で魅力的に示す言葉」

です。ビジョンをひと言化しては、この定義で検証し、これだ!と思えるまで繰り返し、見つけていくのです。いいビジョンは一度見つかってしまえば、ビジョンと連動した強い施策が思いつきやすくなります。だからこそ、何よりもまず、私はビジョンのひと言化に取り組むのです。

そして、ビジョンを体験へ。共感からファンを育むために。

 ビジョンをひと言にできた後は、いよいよ生活者に体験してもらうステップです。生活者にビジョンを体験してもらい、共感してもらう。うまくいけば企業のファンになってもらえるので、体験してもらうことはとても重要です。施策のアイデアは、ビジョンに伝えるべき事が凝縮されているので、ひねり出すのはそこまで難しくはありません。ビジョンを起点にアイデアを考え、いいアイデアかどうかをビジョンに立ち戻って考える。その繰り返しで、連動性の高い、いいアイデアが比較的早く生まれます。
 ここからは私が担当した企業の事例を交えて、ビジョンをどのような考えで生活者に体験してもらったか、ご説明したいと思います。


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「病院食に三つ星を。」を目指す、レストランの開発。

 私が担当した当時、病院食(病院で提供される料理)は、今よりいいイメージではありませんでした。

「我々は長年、病院に入院される方に、おいしいと思ってもらえる調理法や技術を開発してきました。実際、病院食を食べてみると、びっくりするくらいおいしいのですが…。まだまだ世の中の病院食のイメージが、いいとは思えません。イメージを変える方法はないでしょうか?」

 このようなご相談を、病院食の提供を行っている企業のご担当者から伺いプロジェクトが始まりました。それからは実際に病院食を試食させてもらったり、開発現場を見せてもらったり、経営者の方のお話を伺っていきながら、この企業のことを深く知っていきました。すると、1つの想いにたどり着きました。それは、病気の人、高齢の人、どんな人でも、おいしいと思える料理をずっと提供していきたいという想い。この想いを実現しようとこの企業は常に行動していたのです。私はこの想いをもっと世の中に伝えていくべきだと考え、まずはビジョンにして提案することにしました。それが

「病院食に三つ星を」

です。今はまだ、病院食にいいイメージがないかもしれない。でも、世界で認められている三つ星を目指せば、そのイメージは変えられると考えたのです。そして、次にこのビジョンを実際に体験してもらうことで、イメージを変えていこうと、一般の方に体験してもらう施策をご提案しました。それが、

病院食レストラン

です。病院食レストランとは、病院食を提供する現場で使われている調理法や技術を使った、一般の方向けのレストランのことです。
 このアイデアはビジョンが明確なので、すぐに出てきました。「病院食に三つ星を」を体験してもらうには、病院食を実際に食べてもらうしかない。これはもう三つ星を目指す病院食レストランの経営を提案するしかないといった具合に。
 そしてご提案すると、なんと、実際にオープンさせることができてしまったのです。オープンまでには2年ほどの歳月を要しましたが、「病院食に三つ星を」というビジョンが、この企業さんをポジティブな思考にし、新しい事業を展開する決断を促したのです。
 それ以降、私はもう嬉しくて、大学の先輩の伝手を頼っての土地探しから、料理監修のシェフ選定、建築家との図面打合せ、経営会社の方と方針決め、店舗のロゴやネーミング、紙のナフキンなどの備品のデザインに至るまで、全てに取り組み、三つ星にふさわしい選択をしていきました。かなり広範囲にわたるクリエイティブ・ディレクション業務だったので、前のめりで進んだ2年間でしたし、企業の方も「三つ星」という未来に向けて、同じ方向を向いて動いてくださり、開発はスムーズに進みました。やはりひと言化したビジョンがあったから実現できたことだと実感しています。
 そしていよいよ、三つ星を目指す病院食レストランの完成。オープン前のお披露目パーティーでは、「この料理、病院食の技術を使ってるんですか?!すごいですね。本当においしいです!」とお褒めの言葉をいただくほど。半泣きになりながら、オープンの時を迎えたことをよく覚えています。
 オープン後は順調で、毎月の売上げも達成し、某有名グルメサイトの評価も5点満点中3.51を獲得。忘年会シーズンには団体予約が入り、平日もリピーターで盛況でした。こうして、三つ星を目指した病院食レストランは、おいしいという共感を生活者から得ることができ、リピーターというファンが育まれていったのです。
 この仕事は、ビジョンをひと言化し、実際に生活者に体験してもらった私の初めての事例です。広告以外の大型案件でもあり、実際に何年も営業するレストランを作るという大仕事でもありました。ファン育成ができたと実感できた仕事でもあります。たったひと言のビジョンが企業を動かし、社員の方の行動指針になる。それがレストランづくりに発展し、生活者に体験してもらえるようになる。結果、共感され、ファンが育まれていく。このレストラン事例が、自分の仕事の幅を大きく広げてくれたことは言うまでもありません。本当にたくさんの経験を与えてくれた、ありがたいお仕事でした。


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「本気で寄り添う予備校へ」365日間の受験生応援企画。

 ある予備校の一室で、ご担当者の方はこぼされていました。

「うちは講師も職員も、本当に受験生のことを親身に考えていて、いい予備校だと思うんです。でも、受験生が予備校から一歩外に出ると、物理的に寄り添ってあげられないんですよね。」

 私が担当したお仕事の内容は、デジタル施策を考える事。ビジョンを考えるお仕事ではなかったのですが、この予備校で働く方たちの行動や想いの中に、まだ言葉になっていない実現したい未来があると感じたため、デジタル施策と一緒にあるビジョンを提案しました。それが、

「本気で寄り添う予備校へ」

少し凡庸なビジョンですが、その分、このビジョンに込められた想いをしっかり施策に反映しないと、予備校さんの本気度が世の中に低く伝わってしまう。そのため、徹底的に本気で寄り添うことにこだわったデジタル施策を提案しました。それが、

「365日間、受験生を毎日応援するSNS写真集」

です。内容は、高校生に人気のSNSに、毎日1枚写真と受験生に向けたメッセージを投稿していくもの。それを1年間365日毎日休みなく続ける。ちょっと想像するだけでも大変そうな施策です。でもこの施策で、予備校さんが実現したい未来を、高校生に体験してもらえると直感しました。高校生はみんなスマホを持っている。勉強中、気が散るとスマホをつい見てしまって、いつの間にか時間が過ぎてしまっている。そんな事態がよく起こります。そこで、この予備校さんが、SNSに受験の日までの365日間、毎日受験生に向けたメッセージと写真を投稿し続ける。受験生は、SNSをのぞくと、この予備校の写真に接触し、メッセージで励まされたり、ホッとしたりする。この施策を体験してもらえれば、高校生の共感が得られると思いました。そしてそれは、予備校のご担当者がこぼされていた、予備校の外で受験生に寄り添ってあげることも実現でき、ビジョンと体験を強く結びつけられると考えたのです。
 ありがたいことに、こちらの施策も採用していただき、ある年の2月14日から施策がスタート。「期間」「気持ち」「タイミング」の3つのポイントを踏まえ、共感してもらえる工夫を細部にまで行った施策になりました。

<期間>
 高校生向けのプロモーションを調べてみると、「寄り添う」内容のものがたくさんあります。ただ、プロモーションの期間は短く、1週間だけポスターを公開するだけのものや、ムービーやウェブサイトを作って3ヶ月公開して終わるものなど、受験の1年間を本気で寄り添い続けている施策はありませんでした。そこで、この施策では「365日毎日SNSへ投稿すること」をルールとして貫き、土日祝日年末年始関係なく、受験生と全く同じ立場で、受験勉強の初めから1年後の試験の日まで、本当の意味で寄り添うことにしたのです。

<気持ち>
 頑張れ!と受験生に一方的に伝えても、受験生はすでに頑張っているので、心に響きません。スルーですよね。そこでこの施策では、有名な写真家さんに高校生の日常を切り取った写真を撮影をしてもらい、そこに、受験生がかけて欲しい言葉を添え、気持ちに寄り添う工夫をしました。もちろんその言葉は、独りよがりのものにならないよう、受験を終えたばかりの大学1年生から受験期の日々をヒアリングし、予備校で配布される月ごとの進路指導を熟読し、自分が受験生だった頃を思い出しながら書かれています。さらに、365日分の1日ごとにどんな心境をしているかや、その時どんなメッセージが心に響き、受験を乗り越える支えになるかなども事細かに調べ、365本、一緒に受験する気持ちで、毎日書き続けたのです。
 例えば、模試が開催される日は、模試が終わったら今日ぐらいはゆっくりしようという息抜きの大切さを伝えたり、模試からしばらく経った日に、模試の解き直しが合格の秘訣だと復習する大切さを訴えたりしながら。心境を汲んだ言葉や受験の指針になる言葉で、受験生の気持ちに寄り添っていきました。

<タイミング>
 SNSに写真とメッセージを投稿する時間にもこだわっています。施策が展開されていた頃は、朝や夜に勉強したことをSNSで報告するモニグラやヨルグラが流行っていたので、朝はモニグラの投稿が増える時間の少し前に投稿したり、夜なら食事やお風呂を終えた、ヨルグラを始める時間を狙うなど、投稿するタイミングを分析し、一人でも多くの受験生に届くように工夫していきました。

 このSNS写真集を公開して何ヶ月か経った頃から、「励まされた」とDMをくれる人が現れたり、何十年も前にこの予備校に通っていたという方から「いい取り組みだ」とSNSにコメントをもらったり、嬉しいお知らせを色々いただきました。また、施策の途中の4月と、施策が終わった1年後の3月には、新高3生や浪人生がこの写真集をきっかけに予備校に入学してくれたので、予備校さんの実現したい未来に少し近づけたと感じました。予備校の授業料は決して安いとは言えません。それでもこの写真集を通じて入学を決めてくれた人がいる。それは、この取り組みに共感してくれて、さらにこの予備校のファンになってくれたからではないかと思います。受験生にとって、365日間、一緒に成長していく写真集になっていったのだと思いました。この施策を通して、ご提案したビジョンは間違っていないと感じた私は、「本気で寄り添う予備校へ」で、予備校全体のコミュニケーションをくくれないかをご提案し、今もビジョンの実現をさらに目指しています。


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「交流文化をフツフツ沸かす銭湯へ」の新しい場づくり。

 最後にご紹介するのは、ヒノキ風呂が特長の銭湯。台東区の日の出湯さんの事例です。経営者の田村さんはプロジェクト始めの打合せの際、優しい笑顔でこう語りました。

「銭湯は全国的に廃業が進んでいるのですが、銭湯文化と銭湯を守っていきたいんです。何か面白いことができませんかね。」

そのあとADKチームで色々と銭湯を調べていくと、江戸時代から大衆に広がり、それ以降ずっと

「銭湯は人との交流の場」

だったことを知りました。調べると銭湯は奥が深いのです。そしてADKのチームは、その文化を絶やしたくないと実感したので、

「交流文化をフツフツ沸かす銭湯へ」

というビジョンを考えました。かの夏目漱石も銭湯を好んだと言います。理由は裸になると身分の一切がわからなくなり、みんな平等になれるからだそうです。その良さを活かそうとADKのチームは「新しい場づくり」を提案しました。その名も

「はだかの学校」

 月に1回1年間開校され、落語、料理道具、保護猫、株、囲碁などのテーマごとに講師がお湯に浸かって授業をしてくれるという学校です。何が普通の学校と違うかいうと、裸なのはもちろん、講師と生徒の距離がとにかく近いこと。生徒と生徒の距離もとにかく近い。授業を聴きながら体がポカポカし、裸の開放感と、人との距離の近さが相まって、講師も生徒も交流する。全く知らない人だったのに、その場でたくさん話し、笑顔になっていく。そんな新しい場作りを目指しました。
 他にも、学校なので校章を作り、校章を使った手ぬぐいをデザインする。暖簾を作る。学校なので校歌「はだかの学校」(「めだかの学校」作者の方がこの取り組みに賛同してくださり、替え歌が実現しました)も作ってみる。プロモーションムービーも作ってみる。そんな交流するための演出をたくさん行なって、はだかの学校はスタートしていったのです。

 はだかの学校で落語の授業が行われた回に、参加者に感想を聞きました。すると「講師の人が魅力的で、知らない落語の世界を知れた。いろんな人と話せて楽しかった。銭湯で落語を聴く体験も貴重で、みんなに知らせたくなった。次もぜひ来たい。銭湯っていいですよね。」と共感してもらえました。それ以降、毎回、大盛況のはだかの学校は、人からもメディアからも注目され、その授業の様子は、全国放送のニュース、有名雑誌、主要新聞、最大手ネットメディアのTOPページなどにも取り上げられ、最終的には国境を越え、世界でも有名な通信社のニュースにまでも広がっていったのです。その効果、広告費に換算すると2億円以上。さらにその年の銭湯業界全体に貢献した活動を讃える「日本おふろ大賞」の大賞も受賞。こうして「交流文化でフツフツ沸かす銭湯へ」というビジョンは、「はだかの学校」で体験してもらうことで、共感され、一気に世の中に広がっていったのです。結果、銭湯で交流する楽しさを通じて、銭湯はやっぱり守っていかないとだめだと生活者の意識を変えていけたのです。経営者の田村さんが番台に座っていると今でも時々「はだかの学校はもう開催しないの?」と話しかけられるとのことで、銭湯ファンの心も沸騰させた、いい仕事になりました。


企業姿勢が世の中に問われる今だからこそ。

 ここまでいかがだったでしょうか。
 企業の想いや志がこもったビジョンをひと言化することの重要性。それを一方的に発信するのではなく、やってみたいと思える生活者の体験にすること。するとその体験は共感を生み、いつしか企業にファンをもたらすこと。
 企業姿勢や企業の存在意義が生活者から求められる今だからこそ、これらの重要性と可能性を少しでも感じていただけたら、ありがたいです。

もし、このnoteを読まれて、

・企業や事業、サービスのビジョンを一緒に考えたい
・ビジョンのひと言化に取り組みたい
・ビジョンを体験してもらう施策を実施したい

(ちなみに、流行りのパーパスにも精通していますので、お困りのことがあれば、ご相談ください。)

など、ご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、下記の「ADK CREATIVE MALL」や「info@adkco.jp」 にご連絡いただけたらと思います。ビジョンにかかわらず、さまざまな専門性を持った課題解決のブレーンがたくさんおりますので、心強いですよ。

ADK CREATIVE MALLは こちら


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
それでは次週をご期待下さい。さよなら、さよなら、さよなら。


松田写真

コピーライター/クリエイティブ・ディレクター
松田 伊久磨 / Ikuma Matsuda
熱帯魚やサンゴの生態に強い関心があり、老後は大学院に通って研究に明け暮れたいと考えている1児の父。
「経営者に言葉の武器を」をモットーに、10年以上のストプラ経験を活かした戦略から、言葉を軸にしたコミュニケーションの設計・制作まで幅広い仕事を得意としている。ここ何年かは、特に企業のビジョンをひと言化し、一貫性のある体験をつくっていくことに燃えている。

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