見出し画像

バズらなくても、たったひとりがめちゃくちゃ好きになってくれる広告をめざして。

「いや、広告なんだから話題になるほうがいいでしょ」という声が聞こえてきそうなタイトルですみません。たしかに、そのとおりだと思います。

でも、わたしが「たったひとり」にこだわるのには理由がありまして。これからそれを紐解いていければと思いますので、ぜひ最後まで読んでいただけるとうれしいです。

求人広告から、マス広告の世界へ。

はじめまして。ADKクリエイティブ・ワンのコピーライター、平岩里紗と申します。新卒ですこしだけWebの制作会社に所属した後、地元名古屋で7年ほど、求人広告をつくる仕事をしていました。

ひょっとしたらみなさんも、就職活動や転職活動で目にしたことがあるかもしれません。さまざまな業界・職種の募集がずらりと並ぶ、求人サイトや求人誌。そこに掲載される広告を、コピーはもちろん、ときには自分で(ヘタなりに)写真撮影やデザインにも挑みながら、地道にコツコツつくっていました。

そんなわたしが、30歳を過ぎてから、制作会社のコピーライターに転職。同じ「広告」といっても、求人広告とマス広告は、目的も作法もぜんぜんちがいます。先輩から「コピーが小さい」(文字サイズではなく内容のスケールの話)といわれることに、最初は戸惑い、苦戦しました。

それでもなんとか今もコピーを書いていられるのは、やっぱり、求人広告時代に得たスキルや考え方のおかげだと思うのです。

話し下手なら、聞き上手になればいい。

とつぜんですが、以前、尊敬する上司から、「右脳っコ」と言われたことがあります。これは「右脳系コピーライター」の略ですが、まさしくそのとおりで、わたしはもともとロジカルな発想や説明が得意なほうではありません。

人前で話すのも人一倍緊張しますし、とくに20代半ばのころは、年上の経営者や人事のかたとうまく話せる自信がなくて…。取材に行くのが怖くてたまりませんでした。

でもある日、このままじゃヤバいと思い、むりやり考え方を変えました。話し下手なら、聞き上手になればいい。わからないことは、素直に聞きまくろう。ていうか取材なんだし、聞かないほうが失礼だと。で、右脳が「気になる!」と言ったことは、どんどん深掘りしていく。

たとえば、会社でネコを飼っていると聞いたら、名前は?歳は?性格は?
化粧品販売の仕事なら、社員割引はある?どんな商品を何割引きで買える?
定年退職する人の後任募集なら、何十年とつづけた仕事の中で、いちばん楽しかったことは?いちばんの失敗は?…なんて具合に。

若さと緊張で、トンチンカンな質問もたくさんしたと思います。でも不思議と、怒られた記憶はありません(丸顔だから?)。

そうやって夢中で集めたたくさんの情報の中から、応募者が興味をもってくれそうなことや、安心してくれそうなこと、とにかく心が動きそうなことを吟味して書く。

みんなが「すごい!」とおどろかなくていい。その会社に合うたったひとりが、「いいな。好きだな。」と感じてくれれば。そんな気もちでつづけていたら、「理想どおりの人が採用できたよ!」なんて言葉をいただくことが増えていきました。

いいとこ9割、惜しいとこ1割。

これは求人広告に限った話ではありませんが、いいことだけ言われると、なんだか信用できない気がしませんか?だからわたしは、ちょっとネガティブなことも、あえてすこしだけ書くようにしていました。

でも右脳っコなので、心くすぐるフォローの言葉も忘れずに。たとえばオフィスが駅から遠い場合は、「〇〇駅、徒歩10分。でも近所に、おしゃれで居心地のいいカフェがあります」なんて感じで。

効果のほどを数値化することはできませんが、企業の印象をよくするための工夫は、どんなことでもしたい。そういう気もちで、いつも試行錯誤していました。

ただむずかしいのは、採用成功をめざすうえで、応募者が増えればいいわけでもないということ。たとえ100人が応募してくれても、企業が採用したいひとりに出会えなければ、残念ながら失敗です。さらに少人数の企業だと、選考の手間が大きな負担になってしまいます。

だから究極の理想は、その企業にいちばん合うひとりが、めちゃくちゃ好きになって応募してくれることなのです。

そのために、先ほど挙げた「あえてちょっとネガティブな話」をすることで、本気度の高い人だけが応募してくれるよう調整したり。そうやってめでたく採用に至り、その人が数年後も元気に働いている、なんて話を聞くと、とてもうれしくなるのです。

求人広告は、人生広告。

わたしはそう思っています。だって就職や転職って、人生を変えてしまう可能性もあるから。わたしが書いた言葉、そして書かなかった言葉で、誰かの人生や、企業の未来も変わってしまうかもしれない。

そう思うと、真剣にならないはずがありません。慎重に。ていねいに。書いては消してをくりかえし、やっと入稿を終えたあとも、「応募が1件もなかったらどうしよう…」と不安になったり。

当時オフィスに、「神は細部に宿る」と書かれた紙が貼ってありました。10年以上経った今でも、ときどき思い出すくらい大事にしていた言葉です。

「細部」にもいろいろありますが、たとえば企業が気づいていない、隠れた魅力を見つけることもそう。その企業の人にとっては当たり前で、取るに足らないことだとしても、わたしや応募者の視点でみると、じつはとても素敵なことだったりします。それをちゃんとすくいあげて、心に届く言葉にできるか。

もちろんカンタンではありません。でもうまくいけば、採用された人の人生がいい方向へ進む。そしてさらにうまくいけば、自社の広告を見た社員のかたが、「オレ、いい会社で働いてるんだな」なんて思ってくれたり。

インナーモチベーションも上げてしまう求人広告。よくないですか?そこで働いている人の人生までちょっと明るくできたら、それは最高の人生広告だと思います。

と、ここまで書いて気づいたのですが、ひとりの心を動かすために、想いをめぐらせ、手を尽くすこと。それは求人広告だけの話ではないのかもしれません。

わたしは今、ADKで、「エグゼキューション・クリエイティブ」というコンセプトを掲げるチームに所属しています。「エグゼキューション」とは、『実施、実行』。つまり、最後のアウトプットにこだわるチームです。

もちろん実行するだけでなく、どの仕事も企画から携わります。ただいちばん得意な領域が、最後のアウトプットだということです。

アウトプットは、広告を受け取る人にもっとも近い場所です。だからこそ、その人はどんな人で、なにを考えているか。受け取ったときに、どう感じて、どう行動してほしいのか。あらゆることを想像して、いちばん深く届くかたちに磨き上げていく。

これって結局、クリエイティブの本質で、求人広告も、マス広告も、「エグゼキューション・クリエイティブ」もおなじだと思います。バズることを目的にするのではなく、ひとりに向けて、ていねいにメッセージを贈り届けるクリエイティブ。そしてそれが、最終的にたくさんの人の心を動かしていけたら最高です。

心を真ん中に、細部までアウトプットにこだわる「エグゼキューション・クリエイティブ」チーム。わたしは末っ子の右脳っコですが、6人の仲間の中には、頼れる左脳派もちゃんとそろっています。もしすこしでも気になりましたら、ぜひお気軽にお声がけください。右脳全開で、心をこめてお手伝いいたします。

ADK CREATIVE MALL 特設サイトはこちら

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

コピーライター
平岩 里紗 Risa Hiraiwa

テレビCM・ラジオCM・新聞広告・デジタル広告のほか、ネーミングや絵本のストーリーを考えるのも好きです。
[Awards]
CCN(コピーライターズクラブ名古屋)賞 / CCN賞 審査員特別賞 尾形真理子賞 / 日本産業広告賞 / 日本BtoB広告賞 など

この記事が参加している募集

自己紹介

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!