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阿波踊りから学ぶ、B2Bクリエイティブは「巻き込み二ケーション」


見る阿呆が踊るアートディレクターになったわけ。


「ぼく、阿波踊りしたい」まもなく小学校の入学を控える息子が発した一言から始まった。ついにこの日が来てしまったか、、、突然のことに驚きを感じつつも、いつかこうなることはわかっていたような気もしていた。
 
5年ほど前から阿波踊りをやっている「踊るアートディレクター」田邊と申します。阿波踊りとはほど遠い広告業界で、B2Bクリエイティブをメインに企画・デザインをやらせていただいています。徳島に、縁もゆかりもない私が、40歳目前から阿波踊りにのめり込んだ理由と、そこから見えた、「B2Bコミュニケーションとは」についてお話をさせていただきます。 
 
私は15年前の結婚を機に、ジブリ美術館と太宰治の街、三鷹に住み始めました。三鷹の商店街では毎年夏に阿波踊りのお祭りが開かれており、そこで初めて阿波踊りを知りました。もともと賑やかなことが嫌いではないので、激しい太鼓の音や掛け声に合わせて踊る姿を見て、テンション爆上がりしたのを覚えています。激しく飛び跳ねる男踊りや、傘で顔が見え隠れする女踊りの美しさに惚れ惚れしてしまい、ぐびぐびとビールが進んでしまいました。それからというもの、毎年その時期になると友人も呼んで場所取りをして酒盛りを楽しむ、夏の恒例行事となりました。典型的な見る阿呆になってしまったのです。

 10年ほど前に息子ができてからは、夏の恒例行事に連れていくことに。息子が見て喜ぶのをいいことに三鷹だけでは飽き足らず、都内で有名な高円寺にも見に行くようになりました。高円寺は本場だけあって規模がケタ違い。人ゴミの中に埋もれながら息子を肩車し、汗だくになりながら踊りとビールを味わっていたのです。そんなことを毎年繰り返していたので、冒頭の息子の言葉「阿波踊りしたい」には驚きよりも納得の気持ちのが強かったのです。あれはビールを飲みながら見るものなのに、、という気持ちはありつつ断ることもできませんでした。
 
阿波踊りをするには“連”という踊り子と鳴り物(楽器)で編成されたグループに所属する必要があります。そこで近所で活動している連に見学に行きました。そこで衝撃の言葉に出会ったのです。連の代表からいただいた「お子様の場合は、保護者も加入する必要がありますので」え?見るなら踊れ…ってことか?すかさず息子の一言がアシストする。「大ちゃん!いっしょにやるよね!」(家族からは大ちゃんと呼ばれています)息子の熱意に巻き込まれるままに、自分も連員として加入することになってしまったのです。

ふと気づくと、毎週の練習に欠かさず参加するほどどっぷりとハマっていました。こうして立派な踊る阿呆になっていったのです。

阿波踊りもB2Bクリエイティブも「巻き込みニケーション」だ。


毎年通っている高円寺の阿波踊りは参加人数1万人、来場者数100万人の超ビッグなお祭りです。参加する人は皆、一年間、このときのために練習していると言っても過言ではありません。私も息子も、この時を待っていましたとばかりに気合いを入れて法被をまとい、帯を締めるのです。

巨大な太鼓や鉦、笛などのお囃子が奏でる大音量のリズムに合わせ、積み重ねた練習の成果を披露します。大きなかけ声をあげながら連のメンバーとともに隊列を組み、大きなうねりをつくります。真夏のお祭りなので全身を汗でびっしょりにして、声が枯れるまで掛け声を上げ、踊り続けます。

そして、堂々と踊り歩く通りの沿道を、びっしりと観客が埋め尽くします。観客も皆同じように汗だくになりながら、私たちの気合いを込めた踊りに応え、大きな歓声や団扇を振って応援してくれます。踊り手が観客を巻き込み、一緒に盛り上がっていく、阿波踊りの醍醐味です。息子に巻き込まれて始めた阿波踊りで、今度は観客を巻き込んで踊るのです。
 
かなり遠回りをしました。実はこれが私の考えるB2Bコミュニケーション。クライアントさんのビジネスにお客様を巻き込んで、一緒に盛り上がっていく「巻き込みニケーション」という発想です。単純に何かを売るのではなく、お互いが巻き込み・巻き込まれる関係性を作り、ともにビジネスを前進させてくということが、B2Bクリエイティブには必要だと思います。
 

その企業の想いが、踊り方をつくる。


阿波踊りの基本は、リズムに合わせて右手右足を同時に出す・左手左足を同時に出す、の繰り返し。普段の動作と大きく違うところがここです。最初はこの動作をマスターするのが意外に難しい。油断するとすぐに逆になってしまい、ただ不自然に歩いているだけになってしまうことも、、、やはり、基本は大事だと痛感させられます。

私が担当しているB2Bクリエイティブも当然、基本は大事。届けたい人が違うからこそ、BtoCとは異なる世界観やコミュニケーションを作る上での独特な型みたいなものは存在すると思っています。

基本がある一方で、阿波踊りには連によっていろいろな踊り方のスタイルや構成、掛け声などが存在します。連ごとに受け継がれて来た伝統や所属メンバーによって、独自の文化や風土のようなものが反映されているのだと思います。

だからこそ、私自身、自分が所属する連の踊り方に従いつつ、どんな風に踊るとカッコいいだろうか?観客を惹きつけられるのだろうか?普段の練習では自分の姿を鏡に映しながら研究しています。基本をしっかりと守りながら、動きにメリハリをつけたり、綺麗に揃うようにしてみたり、カッコいいポーズやダイナミックな見せ方、指先の形など細部にこだわってみたり、あの手この手で踊り方を追求します。

日々のB2Bコミュニケーションの開発でも同じです。クライアントさんが想いを込めたオリエンシートは、その企業の課題とともに文化や伝統が詰まっているものです。阿波踊りで言えば、その連独自の踊り方や構成の指南書とも言えるのかも知れません。

そこに巻き込み・巻き込まれ、一緒にWin-Winの関係性を作って行くための
エッセンスを掛け算していくことで、その企業独自のコミュニケーションを
つくり上げていくのです。

伝えたいのは単なる企業情報ではなく、想い。それは社会に必要とされる技術やサービスを生み出す、情熱やかけ声だと思います。それに応える、見る人を巻き込み・巻き込まれるようなコミュニケーションを設計するのが僕なりのB2Bクリエイティブです。

もっともっと踊りたい。


阿波踊りで有名な「ヤットサー、ヤットヤット」という掛け声。これは諸説あるのですが「久しぶり」「いらっしゃい」「ごくろうさま」だったりと挨拶的な意味だそうです。まさにコミュニケーションの基本なのです。

コロナの影響で高円寺の阿波踊りも2年連続中止になりました。今年もどうなるか現時点では不明ですが、私は毎週のように練習をしていつでも踊れるようにスタンバイをしています。

もちろん仕事もいつでもスタンバイしています。巻き込み・巻き込まれる僕なりのB2Bクリエイティブで熱く踊らせていただきます!お気軽に声掛けてくださいませ。ヤットサー!


田邊 大 Dai Tanabe 
アートディレクター

CM制作会社を経てデザイナー、アートディレクターに。プロダクションでの経験から、ディレクションのみならず、自ら細部にわたるデザインを手がけた実績も豊富。硬いものから柔らかいものまで、幅広く担当。
息子2人とともに花道連所属。



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