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2歳児だから?それとも?6秒も待てない時代を生き抜くコンテンツ力とは。

生まれた時からスマホやタブレットと接しているわが家の2歳児を観察していると、今ではYouTubeで広告が始まった瞬間に間髪入れず画面をスクロールし、別の動画を探し始めます。無慈悲にもほどがある。

と、広告を世に送り出す立場からは思う一方で、でもそれってわが家の子供だけじゃなく、今の時代の誰にでも当てはまる気分なのでは、とも思うのです。

スキップまでの6秒すら待ってくれない時代に、それでも誰かに届けたい情報がある。想いがある。だからこそ、「思わず目を向けてしまう/探してでも見たくなるコンテンツをつくる」という考え方が、解決の糸口になります。

「6秒の間につかみ」すら通用しなくなる時代

親の仕事はYouTubeを見ることだと思われている節があります。
(資料映像探しといっても、わからないだろうよ)

少しだけ自己紹介を。“バイラル・エンターテインメント”という発想を強みとする守田ルームでコピーライターをしている吉田礼といいます。ふだんは言葉や企画を考えていますが、今回は執筆時点で2歳11ヶ月になる子供を育てながら考えたことを書きたいと思います。

ちょうどコロナ禍と同時期に子育てを始めた私は、仕事のかたわら、図らずも長い時間を子供と過ごすことになりました。保育園に入れてからも休園の度にまるまる一週間家で一緒に過ごすこともしばしば(白目)。

絶望的に仕事が進まない焦りの一方で、見方を変えれば(諦めともいいますが)、子供のリアルなインサイトをインプットしまくるいい機会と捉え、できるだけ観察することにしました。するとその中で、これからのクリエイティブを考える上でのヒントがありました。

2歳児の観察によるYouTubeのリアルな見方

まずYouTubeの見方の観察です。2歳になった頃からすでにお気に入りのチャンネルがいくつかあり、動画を見るときは関連動画をたどりながら好きな動画を中心に見ています。歌ものの子供向け動画や、ダンスものも好きです。キャラクターもだんだん好みがはっきりしてきました。

操作に関しては、自分で文字を打って検索することはまだできないので、そこは親に頼りますが、それ以外はだいたいマスターしています。タッチパネルネイティブすげえ。

だからうちのテレビは最新じゃないんです。
指紋がつくだけなのでやめてください。

そうして好きなチャンネルを視聴している最中に広告が挟まれるとどうなるか。瞬間でその動画の視聴を諦め、画面をスクロールし、他の動画を探し始めます。この間、1秒未満。離脱後は同じチャンネルの動画を探すとは限らず、そのとき表示される中からどれかを選びます。

選ぶときはサムネイルを見て少し見比べます。即決〜3秒前後。それで選ぶのは前に見ていた動画と同じチャンネルとは限らず、どれでもおもしろそうと思ったものを選択します。どうしても見たい動画が表示されない時だけ「〇〇○探して!」と検索のリクエストを親にしてきます。

広告をスキップするボタンの使い方はいつの間にかマスターしていて、自分で正確に操作できます。覚えた当初こそ機能を確かめるようにスキップボタンを押したりもしていました。しかし、もはやスキップボタンが使われることはありません。それが押せるようになるのを待つより、スクロールして他の動画を探す。それ一択です。

子の心親知らず。全画面を好まない謎

視聴の仕方ではもう一つ好みがあって、全画面表示はあまり好きではないのです。親心としてはせめて目が悪くならないように、なるべく動画の表示面積を大きくしようと思うのですが、それは余計なお世話なようで、タブレットなら再生画面の横か下にずらーっと他の動画のサムネイルがある方がいいみたいです。スマホなら縦位置。動画自体は小さく表示されても、それ以上に他の動画へのアクセスがスムーズな方を選択しているようです。

単に前頭葉が未発達で待てないからとか、文字が十分読めないので広告が何秒なのかわからないからとか、スキップボタンの文字が認識できないから(「○秒後に動画をスキップできます」)とか、「子供だから」として説明できる部分も多分にあると思いつつ、同時に、UI/UX設計にも見過ごせないポイントがあると思い始めました。

それは、TikTokやInstagramのリールを見ているとき。動画をひゅいっと上下にスワイプしながら視聴している様子は、YouTubeで動画を探す時とまったく同じだったのです。こうしたアプリは次々と動画を読み込み、視聴しながらまた次のコンテンツを探します。リストとか一覧とかから選んで再生という段取りではなく、「まずは再生」です。そして冒頭の一瞬で、自分が好きな動画かどうかを判断しているのではないかと想像しています。

とはいえ、より深く届けるチャンスかも!

まったく広告にとっては取りつく島もない視聴者です。こんな子供たちがやがて大きくなり、広告などのコミュニケーションを届ける相手になるというわけです。未来やべえ。

タブレットにはロックをかけていますが、見たいときにすぐロックを解除してやらないと
写真を撮りまくってクラウドの容量を圧迫する脅迫をしてきます。

コミュニケーションの送り手としてはやれやれ、ではあるのですが、では絶望しているかというと、そうでもありません。

たった1回の再生で耳コピ→エンドレス再生も

わが家の2歳児のYouTube話に戻りますが、興味がない動画には一瞥もくれない一方で、好きな歌だったり、ダンスだったり、おもしろい響きのフレーズだったり(日本語でも他の言語でも)、興味をもった動画には即座に「もう一回!」というリクエストが来ます。動画の最中でも、特定のシーンを繰り返し見たいときはそのように激しく督促してきます。あの…オンライン打ち合わせの最中なんですけど。

そうして気に入った動画は即座に覚え、動画に合わせて歌ったり踊ったりします。それが広告だとしても同じです。

TikTokやInstagramのリールなら、デフォルトでループ再生の仕様になっているので、ケタケタ笑いながら延々と見続けます。近くにいると聞かされる方が覚えてしまうくらい再生し続けます。おもしろい動画には熱中するのです。

もっともっと、他にも見たいから縦位置で見る

もうひとつ、メディアとの接し方で改めて気づいたことがあります。ウェブでもすっかりおなじみになった無限スクロールの威力です。このUI/UX設計は、終わりがなく、つまりアプリを離脱するタイミングがみつけづらいのです。

個々の動画は次々と(勝手に)ループ再生され、全体としてアクセスできるコンテンツ量は無限にローディングされ、なんなら視聴中にも最新動画が次々にあがるので、なかなかお終いにできない。ちょっと、いつまで見てんの!

このメディア体験があるかないかが、その後の視聴の仕方に影響している気もします。「若者ってスマホで動画を見るとき、どうして縦向きのまま、小さな画面のまま観るのだろう?」という疑問が湧いた経験をお持ちかもしれません。その回答となる仮説は、「横に持ち替えるのがめんどくさいから」ではなく、「いつでも他の動画に/情報にアクセスできる画面が好きだから」かもしれません。(そして、そんな行動を前提にするならば、若者向けスマホ動画は縦位置でなければならないはずです。)

見たいものしか見たくない=見たいものは見る

結局のところ、見たいと思っていたコンテンツが広告により中断された瞬間、興味がなければ即座に飛ばされます。6秒すら待ってくれません。ということは、関心のある人に対する広告配信をより精緻化すると同時に、クリエイティブとしては0秒めから興味を惹くしかけを強化することが重要です。であればグラフィック的な発想の方がフィットするのでは?とか、いろんな手法が思い浮かびます。

一方で、おもしろいと思ったものは何度でも「もう一回!」と言います。一緒に歌ったり、踊ったりします。コンテンツのエンターテインメント性が、楽しいとか、うれしいとか、それ知ってるよ(自慢)といった感情を呼び起こし、貴重な時間を割いて見てくれるのです。それがたとえ広告であったとしても。

たまに、テレビを見ながら今のシーンをもう一度見せてくれと要求してきます。
(放送局の方にお願いしてみてはいかが?)

もし結論めいたことを挙げるなら、つまるところ子供も大人も、人は自分の興味のあるものは見る。興味のないものは無視する。そんなシンプルな話かもしれません。昔のテレビのチャンネル数と違って、無限にあるコンテンツを無邪気に乗り換えながら楽しい時間を過ごそうとしているのかもしれません。メディアとの向き合い方が、時代によって異なるのは当然だと思います。

エンターテインメント変換で、目を捕らえ心を惹きつける

だからこそ今は、受け手が見たいと思うものの発信に徹するのが合理的です。その方法として、今まで通りの広告をより多くの人が興味を持つエンターテインメントに変換する発想が役に立ちます。おもしろい!驚いた!知りたい!どうなっちゃうの?といった受け手の感情を味方につけて、企業からのメッセージを伝えていくことができます。

人は見たいものを見るのと同様に、コピーに関しても、聞きたい言葉に耳を傾けてくれます。なので、送り手の言いたいことを受け手にとって聞きたいことに置き換えながらメッセージをつくることを意識しています。

そのために、クリエイターは時代を観察するとともに(メディア環境を含め)、生活者を観察し、何に関心があるのか、どんな行動をしているのか、どんな言葉をかけてもらいたいのだろうかと日々想像しています。

「広く」、そして「深く」へのチャンスに

人の関心に割り込むハードルは上がった時代。でも、いったん意識に入り込むことができた広告は、むしろより深く届くようになったとも言えるかもしれません。広く、そして、深く。それは人の心に飛び込むための工夫、つまりクリエイティブ力を発揮するチャンスなんだと改めて感じています。

さて、今紹介したエンターテインメント化したコミュニケーションを得意とするのが、バイラル・エンターテインメントをコンセプトに掲げる守田ルームです。アウトプットとなる表現だけでなく、インサイト探し、コンセプトやコミュニケーションフレームから考え、「どうしたら目を惹くか?」「検索したくなるか?」そしてそれらの入り口となる「どうしたらエンタメ化できるか?」といった観点を追求し、6秒すら待てない受け手にも届くパワーを持った企画を得意としています。

若い人をはじめ広告が届きづらいとお悩みのみなさま、いっしょに楽しく解決してみませんか。お仕事のご相談、ぜひお待ちしています!

問い合わせフォームはこちらから
https://www.adkco.jp/contact/

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最後まで読んでいただきありがとうございました!

吉田礼/コピーライター
2ヶ月の育休後、子育てと仕事の日々に突入して約3年。この経験をまた何かの企画に生かしたいです。

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