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外資系企業広告の生態系

はじめまして、高井学と申します。
ADKクリエイティブ・ワンという会社でクリエイティブディレクター、アートディレクターとして、広告制作をしている者です。その前は、外資系広告会社に10年ほど所属していました。その経験からか、ADKでもいくつかの外資系企業の方々とお付き合いさせていただいています。


外資系クライアントを担当させていただいていますから、朝はスタバ片手に出社して、バリバリの英語でプレゼンして、海外を飛び回っています。
・・・すいません、嘘です。
スタバ片手に出社したことありません。英語しゃべれません。海外、飛び回っていません。
もう、超がつく日本人です。あぁ、英語、喋れるようになりたい・・・。
10年も外資系企業にいて、なんで英語喋れないんだというツッコミはごもっともです。
なんなら、私が聞きたい。なんで、あんなに毎日、英語を聞いたり見たりしていたのに、お前は英語が話せるようにならなかったのかと。
まあ、優秀な通訳さんがいたので、英語を話さなければならない状況に追い込まれなかっただけですが・・・。


とまあ、それはさておき、10年の外資系企業の広告制作を経て、現在、私はADKで「BOLD EXPERIENCE」を掲げている根本チームに席を置いています。
「BOLD EXPERIENCE」直訳すると「骨太な体験」ということですが、根本チームは、そんな本質にど真ん中の強いクリエイティブによって、長期継続できる強いブランドを作るお手伝いができるチームです。
で、この本質にど真ん中のクリエイティブというのが、今回お話しする「外資系企業広告の生態系」にも深く繋がっていたりします。
外資系企業の広告といいましても、もちろん企業によって広告の作り方は様々ですので、これが外資の広告の作り方だ、と断言できるようなものではないですが、私の経験からみた外資系企業の広告をお話しさせてもらえればと思います。


●外資系って、どういうところ?

10年以上前、外資系広告会社に入り、某世界的消費財メーカーの方々と初めて仕事をさせていただいた時に、私は面食らいました。
英語で議論しているというのはもちろんなのですが、翻訳された日本語の内容も半分くらい何言ってるのかわからない。
え、それ、ちゃんと日本語に訳してますか?みたいな。
RTBって何?ボンディングって何?ACBって何?セグメントって何?
会社の先輩には、にこやかに「わかんないでしょ?みんな、そうだったから」と、過去に先輩たちがまとめてくれた用語集を手渡されました。その中に載っている用語の多いこと、多いこと。で、必死でそれを憶えようとしていると「あ、でもその用語集の半分くらいはもう古くなって使われてないから気をつけてね」なんて言われる始末。
これが最初のカルチャーショックでした。

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ただ、これは裏を返すと、しっかりとマーケティングの観点から検証がなされているということの証明なんですね。なんとなく良さそうとか、これが好き、というような曖昧な感覚で物事を進めるのではなく、目的を明確にし、そこに向かってちゃんとゴールできるのかを論理的に検証する。そういうプロセスがそこにはありました。

ちなみに今、私はこのマーケティング用語をできる限り、平易な言葉に翻訳して話すように心がけています。理解されないマーケティング用語で話してしまって、相手に理解されないのが一番に良くないことですので。とはいえ、たまに横文字マーケティング用語を使ってしまったりして、「あ、言っちゃった」と心の中で反省したりします。
マーケティング用語って、長くて専門的な内容を一言で表しているから、使いやすいんですよね・・・。すいません、言い訳です。


●クライアントさんより偉い存在。

さて、外資系企業において、クライアントさんよりも偉い存在って、なんだと思いますか?
それは、消費者。
つまりそのブランドを買ってくれるユーザーです。
外資系企業の方の中には「コンシューマー(消費者)is ボス」と断言していた人がいたくらいです。

外資系企業は必ずと言っていいほど、調査を行います。パッケージ調査、フォーカスグループインタビュー、CMの公開前テスト調査など、ありとあらゆる調査を行い、自分たちのボスである消費者のことを知ろうとします。
それ、ちょっと考えたら分かるんじゃないの?みたいなことまで調査することがあります。「それは本当にそうなのか?思い込みじゃないかの?」という色眼鏡をかけないでちゃんと消費者と向き合うという姿勢がそこには存在します。
もちろん、消費者調査の全てが正しいわけではありません。CMのテスト調査の結果が良かったからと言って、必ずしも商品が売れるわけではないというのも、また事実です。
調査で大切なのは、出されたデータをどう消化して、活かしていくのかということに尽きます。調査結果を正しく分析できることができれば、新しいターゲットのインサイトや太いアイデアにつながるヒントが見つけられることもあります。そして、その消費者に向き合う姿勢はこれからの多様化する社会におけるクリエイティブ制作に必要な要素なのかもしれません。

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●ここが違うよ、外資系。

ちなみに、私が考える外資系企業と日系企業の広告制作における最も大きな違いは「クリエイティブブリーフ」の存在だと思います。
クリエイティブブリーフって何?普通のオリエンシートと何が違うの? と思われたと思います。
ものすご〜く簡単にいうと、オリエンシートの課題をクリエイティブに落とし込むために再構築された、めちゃくちゃ良くできたクリエイティブ用のオリエンシートのようなもの、です。実はこのクリエイティブブリーフ、クライアントの中で制作する場合もありますが、クライアントと広告会社が共に作り上げることが多いです。
クリエイティブブリーフの特徴は(あくまで私の経験上の解釈ですが)予算や目標が書いてあるだけのものではありません。

例えば、
◆現状のマーケットにおけるブランドの立ち位置、そこからブランドがマーケットに対してどういうポジショニングをとっていきたいか?

◆現状のブランドの資産や価値、そしてブランドを今後どのように進化させていきたいのか?

◆ブランドが狙いたいターゲットの現状、そのターゲットに対して、ブランドの印象をどう変えていきたいか?

などなど。
企業によって書き方は様々なのですが、共通して言えることは、問題意識やコミュニケーションの方向性をクライアントさんと広告会社が一緒に考えることで、深いところで認識を共有し、出てくるクリエイティブアイデアにブレがない、より精度の高いものにするために存在するもの、です。
なので、進めていくうちに「あれ?この方向性、違ったな」となって、企画途中でクリエイティブブリーフが書き換えられるなんてことも起こります。
でも、そうすることによって、間違ったという認識を共有し、より良いコミュニケーションに向けて舵を切ることができます。
このように、外資系企業の広告作りは二人三脚の感じが非常に強いです。
必然的に、広告を作る側もクライアント理解が深まり、逆にクライアント側も広告コミュニケーションに対する理解が深まります。

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●アイデアは我々のボスである。

クリエイティブブリーフのプロセスは、広告の作り手に明確なゴールと手段を提供する側面がありますが、見方によっては、クリエイターの足かせになっているように見えるかもしれません。しかしながら、これはブランドのアイデアやトンマナを無視したクリエイターの個性やセンスのみで作られた見当違いなコミュニケーションを作り出すリスクを減らすという意味で、効果を発揮します。
ですので、外資系企業の広告の中にはロゴやブランドネームを隠して見せても、「それって、あのブランドの広告だよね」みたいに、企業やブランドの個性がはっきり出ているものが多いのです。
それはブランドの考え方に沿ったアイデアを最も重要視して、広告が作られていることに他なりません。アイデアは我々のボスである。この基本姿勢が外資系企業の広告にはあるのですね。

さて、ここで私が担当させていただいた事例を一つご紹介します。
ユニリーバのブランド『Dove』のハンドウォッシュのCMです。
Doveはずっと以前からグローバルで「Real Beauty」というブランドフィロソフィーを標榜しています。そして、この考えはありとあらゆるコミュニケーションの核になっています。それはこのハンドウォッシュのCMも例外ではありません。
Doveは広告に有名タレントやモデルを使いません。タレントを使うのではなく、自分のすぐ隣にいるような一般の人に出演してもらいます。そうやって『Real Beauty』を体現するブランドであることに、確固たる信念を持っています。そして、その確固たる信念が積み重なりDoveのアイデンティティになり、唯一無二のブランドを作り上げています。

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『ブランドの中から出てきたアイデアが最も強い。』

これは私自身が、広告作りで大切にしていることの一つです。
私がクリエイティブディレクターで仕事に関わっている時は、戦略にまで口を出させてもらうことがよくあります。場合によっては、クリエイティブ戦略みたいな形で、クリエイティブ提案の前に戦略もどきのようなものをくっつけてしまうこともあります。
それはコミュニケーションの核はブランドの中にあり、戦略がそこにちゃんと紐づいていないと、効果的なクリエイティブのアウトプットが出せないと思っているからです。
だからこそ、外資系企業と広告会社の関わりがそうであるように、オリエンシートの前の段階から関わらせていただき、それこそ「クリエイティブブリーフ」を一緒に作らせていただくようなことができれば、一番良いと思っています。

その戦略はブランドの思い描くターゲットにちゃんと届くのか?
そのアイデアはブランドを強く正しく前進させることができるのか?

ブランドに沿った太いアイデアを作り出すことが、今、必要とされていると思います。
例えば店頭の小さなPOPにも、ブランドの個性をしっかり乗せることで、強いだけではない“ブランドらしさ”をもったPOPを作ることが大切だと思います。そういう消費者との小さな接点にも、ちゃんとブランド体験を乗せることができる。
そういうブランドに沿った、太いアイデアを作り出すことをいつも心がけています。

そう、「太いアイデア」はまさしく私が所属する根本チームのチームコンセプトである「骨太な体験(BOLD EXPERIENCE)」なのです。
ブランドの本質をついた太いアイデアが、骨太な消費者の体験につながり、ブランドへの愛着を深めることにつながります。そして結果として、ブランドの長期的な継続につながる。そんな本質をついたアイデアで、コミュニケーションのお手伝いをさせていただければと思っています。
もし、そういう太いアイデアが欲しいなとお考えでしたら、ぜひお声がけください。
外資系企業の広告制作によって培ったスキルとノウハウをご提供いたします。
強いコミュニケーションを作るために、二人三脚で一緒に走りましょう!


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高井 学 GAKU TAKAI
クリエイティブディレクター/アートディレクター/プランナー
外資系広告会社を経て、ADKクリエイティブ・ワン所属。D&AD、One Show、ADFESTなど、いくつかの海外賞を受賞。この記事のイラストも描いてます。英語は残念なことにしゃべれません。

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