神童ばかりの広告クリエイティブの世界で、神童ではなかったじぶんは、かんがえた。
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神童ばかりの広告クリエイティブの世界で、神童ではなかったじぶんは、かんがえた。

ADKクリエイティブ・ノート

広告クリエイティブの世界に身を置いて、つくづく感じること。それは、おどろくほど高学歴で賢いかたが多い、ということでしょうか。まわりを見わたすと神童と呼ばれて育ったと思われるかたばかり。ため息がでてしまいます。

コピーライター兼クリエイティブディレクターの三井明子と申します。静岡県の清水市というのどかな土地で、神童と呼ばれることもなく育ちました。神童と呼ばれることはありませんでしたが、劣等生だったわけでもなく、むしろ、そこそこ勉強はできたほうだとじぶんでは思っていました。ところが、広告クリエイティブの世界に身を置き、過去の自己評価を恥じました。舌を噛みきってしまいたいほど恥じました。

なんなのでしょうか、この特殊な世界は……。制作チームを組めば、「学年1位でした」みたいなかたがズラリ。そろって頭の回転が速い。知識が豊富。会議はスピーディに進み、理解できないまま置いていかれてしまうこともしばしば。50メートル走ですら10秒をきれない私が、オリンピック選手とかけっこしている感覚です。

広告クリエイティブは、企業さまからつねにシャープな切り口、シャープな感覚、シャープな解決を期待されます。当然です。それをもとめて広告会社にご依頼くださっているのですから。だからこそ、神童と呼ばれてきたかたがたが華麗に活躍されています。でも、私はシャープな導きは得意ではありません。では、どうしたら良いでしょうか。

神童ではなかった私が、神童ではなかったなりの方法論でとりくんできた事例を、コピーを中心にご紹介してまいりたいと思います。


集めれば、いい。

出版社・宝島社の新聞広告。2018年に樹木希林さんが亡くなられた直後に、クリエイティブディレクター佐々木宏さんのもとで制作した企業広告です。

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当初は追悼文で構成する企画でしたが、宝島社の蓮見社長のアドバイスを受けて、樹木希林さんの言葉を集めて「樹木さんから世の中への最後のメッセージ」として制作することになりました。​
「あとは、じぶんで考えてよ。」(朝日新聞掲載)では、私はキャッチコピーしか書いていません。ボディコピーにあたる部分は、私が集めた数百の言葉から、佐々木さんとアートディレクターの浜辺明弘さんといっしょに慎重に選んで構成しました。


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「サヨナラ、地球さん。」(読売新聞掲載)では、樹木さんの言葉をつないで、ひとつの文章にしました。光栄なことに、ご生前にお目にかかる機会がなんどかありましたので、その時の空気感のようなものを思いだしながら文章にしました。

樹木さんならではの、とても魅力的な言葉があってこそですが、メッセージを創作するよりも、多くのかたに届くという考えのもとでの表現です。結果、この広告が、樹木希林さんの言葉を集めた初めての公のものとなりました。その後、さまざまな出版社から同じアイデアで書籍が出版され、それぞれがベストセラーになりました。

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『樹木希林 120の遺言』(宝島社)


今まで私は、「集める」以外にも、設問形式にする、川柳にする、歌詞にする、グラフにする、フローチャートにする、パズルにする、寄せ書きにする、ゲーム画面仕立てなどなど。内容やテーマに合わせ、注目していただけるアプローチを模索してきました。そのウラには、なにがなんでも一本の秀逸なキャッチコピーを書く、と決めるとプレッシャーで逃げだしたくなってしまうので、柔軟に考える余地を残してきたという部分も大きかったです。(←エラそうに書いてきましたが、つまりは秀逸なコピーを書けない末にたどりついた方法です……)


「じぶん」の感覚で、いい。

ある仕事をきっかけに、「じぶん」を市民代表にして、個人的な思いや感覚をコピーにしてもいいんだと思えるようになりました。某ファッションブランドの仕事で、クリエイティブディレクター箭内道彦さんとご一緒した時のこと。箭内さんが、「月9(ドラマ)のセリフみたいに書いてみれば」とアドバイスをしてくださったのです。

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それまでは、一行で多くの心をつかんだり納得していただけるような、鮮やかなコピーを目指していました。ですが、箭内さんのアドバイスを受けて、ドラマのセリフのつもりで、じぶんが、一視聴者として共感できるような言葉を探していきました。

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なんと言っても基準は「じぶん」なので、とてもハードルが下がり、気がるに書くことができました。

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全員が共感できなくてもいい。ひとりでも心が動いてくれれば、というスタンスで書いていくと、今まで感じたことのない気もちよさがありました。

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調子にのってたくさんコピーを書きました。最初のシーズンで1000本以上書いたと思います。しかも100本近くをさまざまな媒体で使用していただきました。

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この機会に、DMやWEBなどで使用いただいた(あまり人目にふれなかった)コピーの一部をご紹介させていただきます。

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ずっと、コピーがうまく書けないと悩んでいたじぶんでしたが、こういう書きかたもあっていいんだとはじめて思うことができました。そのきりかえによって、いまもコピーライターをつづけられています。

また、この仕事でのコピーが編集者のかたの目にとまり、書籍の出版に参加する機会もいただきました。

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『マイペースのススメェー』(パイインターナショナル)


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神童だったかたがたには弱点があります。それは、優秀すぎるがゆえに少数派であること。世の中の99%くらいのかたは神童ではありません。その点、私は、世の中では多数派です。思春期からの挫折やコンプレックス、そして紆余曲折あってコピーライターになれたことなどなど。広告クリエイティブの世界で劣等生のじぶんだからこそ、世の中には広く共感していただけるかもしれない、とポジティブにシフトすることができました。


進学塾・早稲田アカデミーのコロナ禍の広告も、同じ考えで企画しました。

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「やらないじぶんに もうあきた」。世の中の多くのかたに自粛生活がつづくなか、オンライン授業をはじめたタイミングでのアプローチです。

この状況下では、あのちびまる子ちゃんもやる気になるという企画は、ちびまる子ちゃんさながらに、いつもダメダメな生活をしている私自身の実感がもとになっています。「コピーがんばろう」→「明日はもっとやるぞ」→「週末に集中してやればいい」→「なんでけっきょく週末やらなかったのか……大後悔!!!」。こんなことを毎週のようにくり返している私でも、自粛生活で心が動いたさまを描きました。

そんな「じぶん」の感覚を応用したのが、次の「置きかえる」です。


置きかえれば、いい。

はじめて早稲田アカデミーの広告を担当させていただいた時のことです。早稲田アカデミーは、まさに神童のかたも多く通う、高い合格実績をほこる進学塾。そもそも私は熾烈な受験を経験したことがなく、ターゲットとは世代的なギャップもありました。そこで、ターゲットが勉強と対峙していることと、じぶんが仕事と向き合っていることに共通点を感じ、そのことに置きかえてコピーにしました。

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コピーが書けなくて模索していても、それをつづけることで、ある時、ちょっと書けるようになった手応えを感じた経験。


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早く「いいコピー」を書きたいと思っていました。でも、ビギナーズラックではなく、一定レベルのコピーをコンスタントに書けるようになることのほうがたいせつなのでは、と感じるようになったこと。


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苦手意識を持ってしまって、コピーがどんどん書けなくなっていったこと。相手のことを苦手だと思って接していると、たいていニンゲンカンケイもうまくいかなくなってしまうこと。


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じぶんが気に入ったコピーがひとつ書けると、もっと書きたくなる。タンジュン!ですね。


「ライフ」と、広告はカンケイできるか。

ADKのCREATIVE MALLというとりくみのなかで、私は「ライフデザイン」をテーマにしたチームに所属しています。「ライフ」すなわち、人生、生活。身近なテーマでありつつ、とても大きなテーマです。ゆえに、広告で解決できることばかりではありません。ただ、考えるきっかけや、新しい視点などを提案することはできると思うのです。

2019年お正月の宝島社の新聞広告は、まさに「ライフ」(人生)がテーマ。長谷川町子先生の名作漫画「いじわるばあさん」にご登場いただき、超高齢社会に向けてメッセージ。「長寿先進国、おめでとう。」というコピーでくくり、3タイプで展開しました。

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「なんで、長生きしたかったんだっけ。」(毎日新聞掲載)は、じぶん自身の目線で考案した言葉です。人生100年時代と言われるようになりましたが、もしも私が100歳まで長生きできたとしたら、そんなふうに思うだろうなというシニカルな感覚で考えました。

けれど、たとえば、家族目線では「いえいえ、おばあちゃん、理由とかカンケイなく長生きしてね!!!」と思います。どんな広告も、立場によって感じかたはちがいます。広告とは、広く告げることを目的としたもの。だから多くのかたに届けたい。そして、どんなかたちでも、考えたり会話のきっかけにしていただければ、それほど光栄なことはありません。そんな思いで、日々、コピーと格闘しています。

長文を最後までご高覧いただきありがとうございました。神童ではなかったという自覚のもと、それをカバーできるようにと、がむしゃらに今日までやってきました。すこしでもご興味を持っていただけましたら、お声がけいただけますと、とてもとても幸いです。もちろん、神童と呼ばれてきた超優秀な仲間たちもチームに入れてとりくみます!

紆余曲折あって、私がコピーライターになることができた話は、お目にかかることができた機会に。


コピーライター クリエイティブディレクター
三井明子/ AKIKO MITSUI

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コピーライターをつづけられていることに、日々、感謝しながら働いています。職業柄、言葉を精査したいと思ってしまうあまり、SNSなどで発信することが得意ではありません。(つい無言になってしまいます。。。)


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