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オレ、合田ルーム辞めます。

ずっと思っていたんです。合田ルームに向いていないんじゃないかって。

愚痴っぽくはじめてしまいましたが、ADKのCMプランナーの加藤洋平と申します。テレビCMの企画をしています。ソリューションアイデアの専門店街「ADK CREATIVE MALL」で、「フレームデザイン・クリエイティブ」を掲げる合田ルームに所属しています。

「フレームデザイン・クリエイティブ」とは、合田ルーム長が以前のnoteでも書いていましたが、某携帯会社の「昔話の主人公シリーズ」や「犬の家族シリーズ」のように長期的に同じ表現フレームで展開する広告クリエイティブのことです。

合田ルーム長による「フレームデザイン・クリエイティブ」はこちらから

一発系のテレビCMが得意な私。一発系とは、インパクトの強い1つのCMで話題作りを目指すものです。どう考えても合田ルームと方向性が違います。

で、ルームを辞めようと考えていました。

はじめに、なぜ私が一発系テレビCMが得意になったのかをお話しさせていただきます。名古屋でクリエイティブとしてのキャリアをはじめたことに理由があるのか、はたまた3ヶ月で離婚したことに理由があるのか・・・。(絶対、前者です。後者の話はまた次の機会にお話しさせていただきます。)

名古屋からはじまったキャリア。

東京の大学を卒業後、新卒でADKに入社し、中部支社(名古屋)に配属されました。いきなりの中部です。いきなりの引越しです。正直もう嫌で嫌で仕方がなかったです。6月のボーナスをもらったら速攻辞めてやろうと、東京の部屋を残していたぐらいです。そりゃあやっぱり、東京でやりたいでしょ。まぁ、それはいいとして。

まずメディア部門に配属されました。そして、2年目からは営業をし、社内クリエイティブ試験を受け、6年目からはクリエイティブ部門に異動しました。一般的には、試験に合格したら東京本社のクリエイティブ本部に異動するはずなんですが、中部支社内で異動するという・・・。結局、中部に12年もいました。まさかこんなにいるとは!

鍛えられた強み。

とはいえ、中部で学んだことは大きいです。(中部にいた時は気づきませんでしたが・・・)名古屋の企業の広告では、テレビCM制作にかける予算も、タレントさんに出演してもらう予算も、広告露出も、東京と同じというわけにはいきません。となると、シンプルです。企画のアイデアで勝負するのみ。そんな環境にいたことで、長期的な展開を視野に入れたフレーム発想よりも、一発系のアイデアに強くなりました。広告の基本である”惹きつける”ということを叶えようとすると、どうしても汎用性より、アイデアの尖った一発系になってしまうからです。

「強くなりました」とか、簡単に書いていますが、それはそれでけっこう大変なことです。覚えているCMって内容より、まずは「タレントの〇〇ちゃんが出ているCM」って感じで覚えているのではないでしょうか?タレント出演がないのはかなり厳しいです。タレントさんが商品を持ってストレートに広告メッセージを語れば、企画できました!となりやすいです。CMとして十分に成立しています。企画としておもしろいか、そうでないかは別として・・・。タレントさんは、視聴者を惹きつける強い力を持っていますから。しかし、知らない人では、誰?ってなりますよね。惹きつける力が弱いので、アイデアがないと広告として機能しません。そういう私でさえ、「CMはタレントが出てくるもの」という先入観がありました。

地方は、アイデアに強い。

「アイデアだけでおもしろいCMってどんなものなんだ?どうしたらアイデア力は磨かれるのか?」そんなことを悶々と考えていた、クリエイティブに異動して間もない頃。とりあえず時間だけはかけて必死に企画していました。コピーライターズクラブ名古屋(略称CCN)が行なっているCCN賞という広告賞の審査会に参加しました。審査会は、審査員と一般の誰もが一緒に応募作品を見る公開審査です。もともと名古屋を甘くみていたので、「そんなの見てもしょーがないだろ」と上から目線でいたのですが、森川さんという先輩が審査員をしていたことや、企画が行き詰まりアイデアの種を探していたこともあり、はじめて公開審査を見に行きました。会場には、名古屋はもちろん東京や大阪など全国様々な地域からCMをはじめとした広告が集まっていました。

正直に言いますと・・・おもしろかったです!すごくおもしろかった。

特に九州からの応募作品は最高でした。タレントの有無に関係なく、おもしろいものはおもしろいんです。中途半端にタレントさんを起用するぐらいなら、全然起用しない方がおもしろい。アイデアだけで、これだけできるんだと衝撃でした。はじめて見るCMばかりですが、おもしろいものが映された時は審査員も一般参加者も一斉に笑います。会場が大爆笑で一体になります。この経験から今でもアイデアを考えるときは、公開審査会場でみんなが見たら笑うか、びっくりするか、泣くか、などと妄想しながらアイデアのジャッジをしています。この、”見た人がどう思うか”というイメージ、重要です。コンテでよくても、出来上がった時にいいとは限らないんです。机上の空論とよく言われますが、見る人のことを考えていないってことですね。そういうわけで、甘くみていて大変申し訳ありませんでしたって感じです。ホントすいません。予算じゃない、タレントの有無じゃない。もちろん、予算があるに越したことはないです。(念のため!)

余談ですが、海外の広告賞もアイデア勝負です。海外のタレントさんなんてわかりませんし。そういう意味では、日本の地方広告賞は、海外広告賞にある意味近いのかもしれません。

で、合田ルーム辞めるの?

ここまで長くなりましたが、冒頭の「フレームデザイン・クリエイティブ」の話に戻ります。

最近担当させていただいた仕事、不動産査定サイト「リビンマッチ 」のテレビCM。昨年6月ぐらいからテレビCM放映を開始し、複数制作させていただきました。毎回、目的があり、そのための表現開発をしています。一部、出演者やサウンドロゴなど共通する部分もありますが、フレームと言えるような表現展開はしていません。

ある時・・・
まだやっていない切り口や表現を探すため、制作した十数本のテレビCMの画像をパワーポイントに並べて貼り、俯瞰して見てみました。そこで、気づいたんです。推理小説で都合よく閃く刑事のようですが。ひとつひとつのテレビCMの表現はバラバラでも、すべてに共通する“匂い”があることに。トーン&マナーと言ってしまうと、少し表面的な感じもします。もっと根っこにある共通の何か。“らしさ”というのが適切でしょうか。

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“らしさ”の正体と、“らしさ”はつくれるということ。

「リビンマッチ」の場合は、昨今多々あるデジタルサービスの中で、広告的な差別化が必要だと考えていました。そこで、あえて他のサービスが踏み込んでいない“ユーモアある表現”、“(いい意味で)バカバカしい表現”をいつも意識していました。テレビCM を見た人がそう感じてくれることをイメージしながら企画していました。これが”らしさ”の正体だったんのです。

では、この場合の”らしさ”をつくる具体的な制作のポイントについて。

まず、①気にさせる絵づくりです。例えば、スーツ姿の男性がボクシングをしたり、なぜか丼を持っていたり、女性の顔に目線が大きく入っていたり。なんだこれ?って思うような絵にしています。そしてカットをあまり割らないようにしています。出来るだけシンプルな1枚絵が続くテレビCMを目指しました。普通はカットを割ることが多いのですが、映像は絵の連続だと考えると、同じ絵を続けた方が絵の印象を強く残せます。“あのCM”と、一言で言えるCMは、大多数が言葉より絵の印象です。最近のCMを思い浮かべた時、思い出せるのは言葉よりも絵なのではないでしょうか?絵という点から、”らしさ”をつくります。

そして、②1つだけクセの強い映像ギミックを入れます。例えば、最後の尺を余らせて放送事故のように見せたり、おじさんがカツラを自分で取りまた被ったり、主役の女性が画面から突如消えたり、CMでお馴染みのラストの検索窓が大量に出てきたり。1つだけがポイントです。料理のスパイスと同じです。入れすぎるとどんな味かわからなくなるように、わけのわからない映像になります。1つのクセの強い映像ギミックで、”らしさ”をつくります。

「フレームデザイン・クリエイティブ」、やってましたw

あれ?

もうお気づきでしょうか?

この”らしさ”でつくるって「フレームデザイン・クリエイティブ」なんです。“らしさ”というフレームがあることで、訴求点が変わっても、表現が変わっても、出演するタレントさんが変わっても、サービスや商品のブランドイメージは蓄積されていきます。 “らしさ”でつくるって、ブランディングなんです。ブランドをつくるのは、”同じ表現”ではなく、その表現の根っこに共通する”らしさ”があるからなのです。

思い浮かべてみてください。歴史を持ち、今も人気の某ファッションハイブランドを。時代ごとにデザイナーを変えても、一時は批判されるような新しいことにチャレンジしても、ブランドイメージを損なわないのは、同じ”らしさ”があるからなんですね。

先ほどのリビンマッチ の事例では、”らしさ=ユーモアある表現”として、”らしさづくりのポイント”を「気になる絵」×「クセの強い映像ギミック」としていました。しかし、企業やサービス、目的や諸条件によって、その都度”らしさ”は変わっていきます。すなわち、”らしさづくりのポイント”も変わっていきます。あるときは、「言葉」×「出演者」とか。あるときは、「ダサいデザイン」×「かっこいいコマソン」とか。その時々の最適解となる”らしさ”を見つけ、広告表現にしていきます。

「フレームデザイン・クリエイティブ」は、幅広く適応できるとても便利なクリエイティブメソッド。長期のキャンペーンだけでなく、単発の表現開発にも十分有効な手段です。

ってことは、合田ルーム辞めなくていいってことですね。

めでたし、めでたし。

オレ、合田ルーム辞めるの辞めました。

ADK CREATIVE MALLは、様々な専門領域を持つクリエイターの集まりです。合田ルームの「フレームデザイン・クリエイティブ」に興味を持っていただけた方。「フレームデザイン・クリエイティブ」はよくわからないけど、私に興味を持っていただけた方、ぜひご連絡ください。相談レベルや、雑談でもかまいません。よくわからない仕事、大歓迎です。
最後になりましたが、ちなみに私、名古屋出身です。

ADK CREATIVE MALL 特設サイトはこちらから
加藤洋平 CMプランナー/クリエイティブ・ディレクター
大学卒業後、2006年ADK入社。メディア、営業を経て、
2011年クリエイティブに異動。
CMプランナーとして、テレビCMを中心としたムービー制作や、
キャンペーン全体のコアアイデア開発を行う。
インパクトの強いTVCMが得意です。
ACC、FCC、CCN、民間放送連盟賞、ADSTARSなど、国内外の賞を受賞。

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