見出し画像

華道思考がBtoBを解決しちゃう??

今日は2022年11月11日(金)9:00。
天気もいいし、花でも生けるか。趣味の華道のために前日に買って、茎を浸してあった花を取り出し、主役選びから始める。
黄色の中菊、若松、千両。3種類とも11月にぴったし。とても旬なメンツ。

さて、主役はこいつに決めよう。一本一本手にとって、窓から差し込む光に照らしながら、主役になる美しい一本をオーディションしていく。

主役を決めたら手早く、鋏で茎の長さを調整し、剣山に丁寧に生ける。そして完成。

おっと、もうこんな時間だ。週一の定例ミーティングがはじまる。手を洗ってこよう。


初めまして。
BtoBカテゴリで強みを発揮するクリエイティブチームで、アートディレクターをやっている吉田圭佑です。かれこれ広告代理店歴も5年になります。
立教大学から多摩美術大学大学院に進学。卒業後、株式会社アサツー ディ・ケイに入社。(現:ADKマーケティング・ソリューションズ)
入社時はアート職採用がなく、枠は総合職。なので、アクティベーション(プロモーション)からスタートし、3年目に受けられるクリエイティブテストを経て、アートディレクターになった、ちょっと異質な経歴の持ち主です。


そして2022年11月11日の09:53。
朝のチームのミーティングで、今回のnote担当に任命されたわけです。
話が来た瞬間、私の役割を感じました。
これは…。BtoB関連の記事に華を持たせってことだなと。


ちなみに趣味は華道とカメラとサウナ。今回は趣味の一つである華道と広告が実は考え方が近いという視点から話ができればと思います。

第一章:華道とBtoB

ここで11月11日(金)の朝に時間を戻しつつ、すこし華道の話をさせてくだださい。

私は華道の三大流派の一つ、小原流で生けるのですが、流派には、しっかりとしたルールがあります。
それが、「主」「副」「客」という考え。いい加減に剣山に刺していくのではなく、この3つの役割を作って生けていきます。(友人が草月流なのですが、言い方は違えど、3つの役割があるというのは同じなようです。)

「主」:主役的な役割。
「副」:主役を立てる存在。名脇役。
「客」:主、副で補いきれなかった部分を補助する役割。

そのような役割だと思ってもらえれば。
そして、そのルールのもと完成したのはこちら。

2022年11月11日の朝に生けた花(菊、若松、千両)

11月に旬な華を使って生けていまして、我ながら結構いいのではと(笑)
旬な花を使っているところもポイントが高い。
ちなみに、どれを主役に選んだと思います?


菊が主役?


綺麗ですよね。白背景に黄色が映える。


と言いつつ、

主役は、向かって左側の一番高い若松です。

「主」はマルで囲った若松

え、主役に色がないじゃないかって?ただの緑のツンツンじゃないかって?ツンツンを舐めちゃいかんです。

そもそも本当に色が目立つ花が、主役なのかというとそうじゃない。
花の持つそれぞれの生命力しなやかさ茎一本一本の逞しさ
唯一無二の特徴や個性はないか。すべての要素を丁寧に吟味し、主役を選ぶ。
色は吟味のための1つの要素でしかないんです。
そして選んだ素材の長所を、他の素材や色を駆使して立たせる。
それが、華道です。

深いですよね…。
やり始めるとすごいハマります。自分だけが気づく、いいところミッケ!みたいな。


それに、意図的に今回この若松を主役にしたかと言うとそうでもない。おそらく他の同じ流派の方がやっても主役はこの若松だったと思います。
細かなルール、しきたりの中でも、ユニークさや個性を作っていく。


これ、私たちのチームがメインにしている、一見お堅いって言われがちなBtoB広告も一緒なんです。

さて、ここからBtoBの話ができればと思います。

BtoB広告って、ターゲット設定が特殊なケースがほとんどです。BtoCは年齢や性別といったデモグラ的にターゲット設定されると思いますが、BtoBのターゲットは、クライアントさんにとっての取引先。中でも、クライアントさんの事業やサービスの購買部門のご担当者や社長をはじめとする、経営層に向けたものが多い。万人に見てもらいたいわけではないことが多い。そのためKPIも売り上げよりも、ターゲットへのリーチ率が設定されることが多いです。
リーチ単価は高くなってもいいから、的確に必要な相手に届けたい。自然とそのようなコミュニケーションになっていきます。

なぜか。
BtoB商材の決裁者が経営者であるためです。仮にIT商材であれば、ターゲットは情報システム担当者も入ってきます。さらにターゲットが絞られている分、無駄を省いた戦略やコミュニケーション、表現がBtoCよりも求められます。

絞られたターゲットや細かな事前設定の中で、個性を出す。

次の章では、事前設定やルールが細かく存在する華道とも近しい、BtoBの話を昨今、盛り上がっているDXの話から説明していきます。

第二章:世はまさにDX時代

BtoB広告に取り組む私たちのチームでは、昨今はもっぱら、DX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマとした広告がとても多いです。
2020年以降、経済産業省も「DX調査」と題して、毎年レポートを発表しているように、日本企業全体が、DX!DX!とデジタル化に着手しています。
そのデジタル化と最前線で向き合っているのは、経営者なり情報システム担当者。
私たちが広告を作るにあたっては、それぞれの経営者や担当者が所属する企業に応じてプランを変えていく必要がありますし、その企業がどの水準までDX改革を推し進めているか。それらの視点も重要。

特に、DX改革のフェーズに関しては、主に3つの段階があります。

DXの大きな3つの段階
①    個別業務のオンライン化およびデータのデジタル化
 (デジタイゼーション)
②    デジタル技術を用いた業務改革による社内業務の自動化や最適化
 (デジタライゼーション)
③    デジタル技術を用いた業務改革による新サービス・新規事業創出
 (デジタルトランスフォーメーション)

これら大きな3段階がありつつ、さらにその企業の中で、

「DXビジョンがその企業にあるか」
「DXを推進する人材は確保されているか」
「データ活用におけるビジネスゴールは設定されているか」

など、クライアントさんが想定するターゲット像をヒアリングした上で、緻密な戦略を立てていきます。

そしていま、どのようなことに困っていて、その問題を企業の担当者が気づかれているか、それに対してどのような情報を、どのような道筋で伝えるのが最適なのか。それらを緻密に分析していった上で表現を企画していきます。そのため、情緒的な価値を伝えると言うよりは、"機能的価値"をCMであれば15秒や30秒で、無駄なく伝えていくことが必要

タクシー広告や業界新聞などは代表的な例で、経営者やビジネスパーソンに向けて、的確にメッセージを伝えられるメディアとして扱われます。

タクシー広告と聞くと、
「あー、ああいう感じがBtoBなのか。」
と実感が湧く方もいらっしゃるかと思います。
(今は在宅されている方が多く、遭遇されていないかもしれませんが。)

ここで私のタクシー広告の印象を例にします。

冒頭で、
「〇〇業務が大変〜!!」と、
担当者が困り始める。

そこに、
「そんな時にはこれ!〇〇!
それさえあれば、データ管理もラクラク!システムに丸投げでOK!」

と言いながら仕事が出来そうな後輩が登場してきて、目を丸くして驚く担当者。

シーンが切り替わり、
図とか使用シーンのインサートでサービス内容を説明。
さらに「課題のヒアリングも〇〇社にご相談ください!」というフォローが入る。

「おお、これさえあれば!解決だ!」
というセリフとともに、
決めポーズや印象的なラストカットで終わる。

15秒の中で、機能面をしっかり伝えていくような王道ストーリー。
私の印象と言いましたが、このフレームは、よく見る流れかと思います。

これらのCMやWEB動画が、何を言っているかというと、

①    社内で起きている問題そしてギャップの解消
②    DX人材の不足を想定としたケアサービスの充実さ
③    着目課題のヒアリングサポート。

「DXビジョンの策定」
「DX人材問題」
「ビジネスゴールの不明確さ」
という、いわばDX導入の3大参入障壁を、その解決ストーリーを伝えつつ、商品やサービスの優位性を同時に訴求しています。

それが会議室だったり、執務室だったり、飲み屋だったりとシーンはさまざまですが、どれも外を括る表現フレームは違えど、これら3つの要素を言っていることが多いと思っています。

おそらく多くの企業が抱えるDX上での課題を解決する商品やサービスをご提案する上で、これが現在ある種の勝ちパターン、定説と言われる構成と認識されているのはないかと。

ここで私、いつも思うことがありまして。


この手のCM、もうワンポイントでさらに魅力的にできるのにな。



と思うのです。

BtoB広告は、BtoCのように消費者の方々向けではないにしろ、経営者や担当者の皆さまだって人。王道ストーリーは良いにしろ、それに付随したクリエイティブアイデアこそが、差別化要素になっていると思うのです。そのクリエイティブアイデアが心に引っかかるフックになって、覚えてもらえるサービスや商材になる。まあ、言われなくても分かるわって話かもしれませんが…。(笑)

そのためにも花の一本一本を丁寧にリサーチするようにクライアント企業やターゲットについて調べ、広告表現に昇華していく。
事前調査などで下から積み上げながら構築していったクレバーな戦略に、キャッチーな要素やチャーミングさを持たせる。

特に、BtoBの広告で、チャーミングさを持たせるということについては、"言葉”が大きなポイントになっていると感じています。

この”言葉”を検討する際に、重要視している要素の1つが、日本特有の言い回しです。単語とカタカナの組み合わせ、いわゆるダジャレっぽい造語だったりがそうです。

「飲みニケーション」とかは代表的な一例です。
商品名でも素晴らしい造語は多く、小林製薬さんはネーミングがうまいと有名です。「熱さまシート」とか「ポット洗浄中」などネーミングそれ自体にどんなソリューションなのかまで含まれている素晴らしい商品名だなと思います。

この手のワードは、日本人特有の単語とカタカナの組み合わせであり、ソリューションそのものが言葉を見た瞬間に一言でわかる。
コミュニケーションコンセプトもこれに同じで、私はこの言い表しがうまくいってない広告を見ると、体がムズムズっとしてしまうわけです。単に、目立つアクションなどを映像に取り入れて奇を衒うだけでは、もったいないと思っています。

さらにBtoB広告ではこの一言でソリューションを言い表すことがとても大切です。というのも、その一言が企業の営業の皆さまが商談をするときの話題の糸口になるんです。

そもそも情報システム担当者にアプローチするのは、営業の方々。

営業の方が、セールスをする時に、耳に残りやすいコミュニケーションができるかどうか。それを左右する記号を作ることが大切だと思っています。

それにセールスの電話に、必ずしも良い印象を持っていない方も多いと思います。まず会社紹介があり、本題に入るまでが長くなってしまったり、「どういったご用件でしょうか」とこちらから聞き返してしまうこともあったりするかと思います。
会社の紹介は避けられないとしても、どんな会社のどんなソリューションで、何を解決するのか。それが一言で明確になっているだけでも、受け手の印象って違うと思うんです。
また会社内での訴求内容の統一化、意思疎通においても、記号化された”言葉”は大いに機能すると思っています。いわゆるインナーコミュニケーションです。

この手の”言葉”の領域は、コピーライターが担うという認識が一般かもしれませんが、

”営業の方のセールストークもデザインする。”


ということに関して、営業の方の気持ちを代弁する書体選びも含め、アートディレクターとしてそこまでをデザインすることがBtoB広告にとって重要だと思っています。

出来立てホヤホヤの”言葉”を、アートディレクション、デザインの力で、記号化し、より拡散しやすいアイコンに昇華する。
アイコン化した”言葉”を、企業カタログや営業用POPなどにまで展開し、全体として大きなコミュニケーションにしていく。

これがBtoB広告のアートディレクターが担う、大きな役目の一つです。


これは、華道の考えでも置き換えることができて、

「主」:ターゲット企業の担当者
「副」:主役を立たせるコピーやコンセプト
「客」:補完的な存在である営業ツールなど(POPやカタログ)

と整理することができます。
主役である担当者を立たせるために、広告が存在する。
担当者のセールスを円滑にするために、細かな事前設定
リサーチキャッチーなワードを開発し、コミュニケーションをデザインする。それこそがBtoB広告の醍醐味だと思っています。

DXにせよ、高い技術力にせよ、BtoB企業がセールスしたい商品やサービスは、その業界内で最先端なものです。だからこそ魅力的なのですが、まだ巷にはないものであることもあり、メリットを伝えられない。そこで、商品やサービスのメリットを一言で簡潔に言い当てられることが重要になる。
むしろ、モノに溢れ、検索すればモノに関する情報が手にしやすいBtoC商材以上に、”言葉”と”記号化”が重要なんです。


さいごに。


華道とBtoB広告。

訴求商材やターゲットである「主」があり、それを立たせるための「副」として、コピーやコンセプトが存在し、補完的な存在の「客」として、グラフィックや販促ツールなどの表現物が存在する。

私はアートディレクターですが、デザインは、あくまでコミュニケーションの中の手法の一つでしかないと思っています。
まず大切なのは、商材やターゲットの深堀り、そしてコンセプト設計。(もちろん、コンセプトを的確に伝えるためのデザインワークに生きがいを持っています!)

プランニングの際にはオリエン資料に突破口が載っていると思っていて、紙がぐちゃぐちゃになるくらい読み込むようにしています。紙じゃなくてデータなら破損するんじゃないかってくらい読み込みます。

” 答えはオリエンシートにある。”

これは多摩美の授業で、大貫卓也さんから教えてもらった考え方でもあります。

オリエン内容をもとに「主」「副」「客」の3つの要素を整理しながら、デザインだけじゃなく、さまざまな視点で企画を検討したいとき、是非ともお声がけくださいませ!

ちなみに華道では主役となる「主」の近くに、それと対話するように花を一輪設置します。主役が孤独にならないように、対話できる相手を常に側に置くように。
この寄り添う一輪の花って、広告パーソンっぽくないですか。
ほんの少しだけ「主」より低い位置にいて、すこしおしゃべりな花。そういう存在って、なんかカッコいいなって思う今日この頃でございます。

「ADK CREATIVE MALL  特設サイトはこちら」

<プロフィール>

吉田圭佑 Keisuke YOSHIDA
アートディレクター

BtoBをコンセプトとしたクリエイティブチームで日々邁進中。王道の企画から、飛んだものまで、アートディレクターとしてデザインの視点からグラフィックやCM企画をプランニングする。もともとファッションデザインからデザインの道に入ってきたこともあり、次回のnoteはファッションと広告で考えてみようかなと思っているところ。

【受賞歴】朝日広告賞/朝日新聞読者賞/釜山国際広告祭(MAD STARS)クリスタル/JPM ベスト・プロモーショナル・クリエイティブ賞/長崎新聞広告賞(ワクコエ)グランプリなど

この記事が参加している募集

私の仕事

最近の学び

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!