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【仕組み】好きのわたしが【表現】に挑んでみようと思った理由

こんにちは、有泉歩美です。
「ライフデザイン」をコンセプトに掲げるチームに所属しています。
 
広告クリエイティブの世界に足を踏み入れて、早5年。
自分なりの思考法や癖なんかも、少しずつ見えてきたような気がします。
 
わたしは企画を思考するとき、ある軸をいつも念頭においています。
【仕組みのクリエイティブ】【表現のクリエイティブ】か、という軸です。
 
わたしなりの捉え方ですが、アイデアの起点がどちらにあるかで考えています。

【仕組みのクリエイティブ】(アイデアの起点が仕組みにある企画)
➡面白い手法ファーストで、意識/行動の変化をうながす

【表現のクリエイティブ】
(アイデアの起点が表現にある企画)
➡感情への訴えかけで、意識/行動の変化をうながす


いわゆる、前者はアクティベーション・後者はクリエイティブと棲み分けされることが多いかと思います。(そんな垣根にとらわれずに、素晴らしいアイデアを生みだす先輩方もたくさんいらっしゃいますが)
 
かくいうわたしは、アクティベーション出身のクリエイティブで、今年からクリエイティブ部署に異動し、コピーライターを目指して日々励んでいます。

本記事では、アクティベーション部署で【仕組みのクリエイティブ】を追求してきたわたしが、クリエイティブ部署に異動して【表現のクリエイティブ】に挑戦してみようと思った理由を紐解きながら、わたしの考える「ライフデザイン」についてお伝えしていければと思います。




わたしの“面白いのツボ”は【仕組みのクリエイティブ】だった


広告クリエイティブの世界で働いていると、「好きな広告は?」と訊かれることがよくあります。たしかに、好きな広告を共有、すなわち“面白いのツボ”を共有することは、一緒に仕事をしたり語り合ったりするうえで、大きなヒントになりえます。
 
わたしは好きな広告を聞かれるたびに、決まって紹介していた事例があります。
 
ハイネケン『Shutter Ads(シャッター・アド)』
カンヌライオンズ2021 アウトドア部門グランプリ他、多数の賞を獲得している企画です。

★アイデアの起点:【仕組みのクリエイティブ】
面白い手法ファーストで、意識/行動の変化をうながす


コロナ禍で閉店を余儀なくされたバーやレストランを応援しようと、ハイネケンが通常のアウトドアのメディア費を削減し、その資金で多くのお店のシャッターに広告を掲載。お店に対してその掲載料を支払いサポートした、という施策です。
 
なんと天才的な仕組みだろう、と思いました。商品を売り出したいハイネケンにとっても、収入が得られず窮地に立たされていた飲食店にとっても、Win-Winの仕組み。さらには、お気に入りのお店を閉店の危機から救ってくれるという意味では、消費者にとってもWinのある仕組みだと思います。
 

こんな気の利いた【仕組みのクリエイティブ】をつくってみたい、という憧れが、キャリアのスタートにありました。
 
また、わたしの“面白いのツボ”が反応した理由を考えてみると、【仕組みのクリエイティブ】へのとっつきやすさもあったと思います。クリエイティブとは無縁の学生時代を歩んできたわたしにとって、戦略的発想が色濃い仕組み起点のアイデアは、思考の範疇にあるような気がして、共感しやすかったのだと思います。


仕組みで人が動いた!はじめての成功体験


わたしがはじめて広告賞をいただいたのは、auじぶん銀行さんのお仕事でした。阪神タイガース協賛企画として実施した『究極の二択階段広告』
まさに【仕組みのクリエイティブ】を意識して取り組んだ企画です。

auじぶん銀行 阪神タイガース協賛企画『究極の二択階段広告』

★アイデアの起点:【仕組みのクリエイティブ】
面白い手法ファーストで、意識/行動の変化をうながす


オフィシャルスポンサー新参者のauじぶん銀行が、熱量の高い阪神タイガースファンに快く受け入れてもらえるようなチャーミングな施策を目指して、甲子園球場に向かうまでの道のりにある大阪梅田駅の階段に広告を掲載しました。

階段広告の唯一のアセットである“登る”という行為に着目し、そこに阪神タイガース愛を問うコピーを展開。ファンが「私はこっち!」「俺はこっち!」と、階段を登って宣言できるブランド体験型OOHに仕立てました。
さらに、コピーをあえて究極の二択で階段をジャックすることで、他球団ファンからの「通れない!」というツッコミどころを入れ込み、SNS上での自走を狙える設計にしました。


階段広告が掲載されると、思惑通り「阪神タイガース以外通行止めの階段!?」といった文脈で数多くのメディアに露出。SNSでもたくさん投稿してもらうことができ、大阪梅田駅へと続くただの階段が「撮りに行きたい」「このために大阪駅に行きたい」と、阪神ファンにとっての観光地となりました。

その結果、PR費0円で、全国番組で放映 / Yahoo! ニュースをはじめとする多数のWebメディアに掲載 / Twitterで万バズを記録、など多くの話題を獲得。全国の阪神タイガースファンにリーチし、本来の目的である「auじぶん銀行=阪神タイガースのオフィシャルサポーター」というイメージ形成に成功しました。

ファンの方々に自由に楽しんでもらえるような【仕組みのクリエイティブ】を目指して考えた企画が、全国の阪神タイガースファンならびに野球ファンに届き、実際に行動を誘発するにつながったこと、大きな反響を得ることができたことは、心から嬉しかったです。


そして大変ありがたいことに、このお仕事でACCメディアクリエイティブ部門ファイナリスト / FCC賞 を受賞することができました。

ただ審査コメントのなかには、「もう少し表現(コピー)でこだわれた部分があったのでは?」というご指摘もありました。より企画の太さや定着力をあげるための“ことばの重要性”を改めて感じたのとともに、コピーのスキルに磨きをかけていきたい、という意欲にもつながりました。


「君の企画にはセクシーさが足りないね」
という挫折


【仕組みのクリエイティブ】好きのわたしが、【表現のクリエイティブ】を意識するようになったのには、もうひとつ大きなきっかけがありました。

わたしは入社してから毎年、ヤングカンヌに応募しています。

ヤングカンヌとは?
広告業界の若手登竜門(30歳以下)といわれるヤングライオンズ/スパイクスコンペティション(通称ヤングカンヌ)
与えられた課題に対して定められた時間内で企画書提出やプレゼンテーションを実施し、GOLD・SILVER・BRONZEを決定。
国際広告祭であるカンヌライオンズ/スパイクスアジアで開催される本選出場に向けて、日本では毎年10~11月頃に予選が行われる。


最初はなんとなく「海外賞とか取れたらかっこよさそう!」という、ゆるっとした動機で取り組んでいました。しかし何年か続ける中で、昨年よりちょっと納得のいくアイデアが出せたり、ちょっといいプレゼン資料がつくれたり、そういった小さな進歩が感じられることが嬉しくて、気付けば毎年挑戦しています。

そしてなにより、ヤングカンヌは【仕組みのクリエイティブ】で戦うことができると感じており(部門にもよりますが)そんなところも自分に合っていたのだと思います。

1-2年目は、まったくかすりもしませんでしたが、普段の業務でたくさんの仕事を経験させてもらったり、先輩方から学ばせてもらったりするなかで、
3-4年目には、受賞に結び付くまでに成長。昨年は、日本代表としてスパイクスアジアにも参加させていただきました。

ヤングライオンズ2023 インテグレーテッド部門 BRONZE / スパイクスアジア出場

課題:アジアの海洋プラスチック問題を解決するためのアイデア
企画:『ecolottery-bag』
お店で売れたレジ袋の代金が賞金となった宝くじシステム
ecolottery-bagで買い物をするだけで宝くじにエントリーできるという
レジ袋の使用量削減を目指したキャンペーン


ヤングライオンズ2022 インテグレーテッド部門 SILVER

課題:先進国の孤独問題を解決するためのアイデア
企画:『@GrandparentsOffice』
一人暮らしの社会人が、近所のおじいちゃん・おばあちゃんの家を間借りしてリモートワークができるマッチングサービス


ヤングライオンズ2022 デジタル部門 SHORT LIST

課題:先進国の孤独問題を解決するためのアイデア
企画:『Grandparents’Call』
早起きが得意なおじいちゃん・おばあちゃんに若者がモーニングコールをお願いできるサービス


★アイデアの起点:【仕組みのクリエイティブ】
面白い手法ファーストで、意識/行動の変化をうながす


ただ、どうしてもGOLDには届かない。ある審査員の方に「君たちの企画にはセクシーさが足りないね」と言われたことがあります。考え方は正しい、機能もしそう。だけど、思わず共感するようなインサイトや、あっと驚くアイデアのジャンプが足りない。

振り返ってみても、わたしの出した企画は、目先のインセンティブで一時的にターゲットの行動を誘発できても、心が動いたり、ましてや社会が動いたりするほどのインパクトが期待できるものでは到底ありませんでした。

どうしたらその殻を破れるだろうか・・・解決の手立てを得るために、社内のクリエイティブ転局試験に挑戦してみることにしました。


“セクシーさ”の答えは
【表現のクリエイティブ】のなかに?


振り返ってみると、わたしが広告クリエイティブを志す最初のきっかけとなったのは、尾形真理子さんがつくる『ルミネの広告』でした。

「風はすべて追い風。わたしがどこを向くかだ。」

出典:東京コピーライターズクラブ(TCC)


このコピーの入った広告が大好きで、スマホの待ち受けにしていました。当時大学1年生、新しい環境に戸惑う日々の中で、わたしの背中を押してくれた、お守りのようなことばだったからです。

★アイデアの起点:【表現のクリエイティブ】
感情への訴えかけで、意識/行動の変化をうながす


強く刺さるコピーを書くためには、「たったひとりに向けて書くこと」という教えを受けたことがあります。

『ルミネの広告』は、圧倒的にわたし向けだと感じられた。この究極の“自分ごと化”をターゲットに体験させることこそが【表現のクリエイティブ】の要であると思いました。


わたしが所属するのは、「ライフデザイン」をコンセプトに掲げるチームです。

ライフデザインクリエイティブ
生活者のキモチに寄り添い、本音に答えるコミュニケーション

ひとの生活や人生についてもっと深く考えてみる。
ひとの心の機微にもっと敏感になってみる。
自分が影響を与えたいたったひとりに、より丁寧に向き合ってみる。

「ライフデザインクリエイティブ」を追求するその過程の中に、これまで自分がたどり着けなかった思考法のヒント、“セクシーさ”の答えがあるかもしれない。

そんな期待が、
【仕組みのクリエイティブ】好きのわたしが、
【表現のクリエイティブ】に挑んでみようと思った理由です。

そして、わたしが尾形さんのコピーをきっかけに進路を選択したように。
わたしも、たったひとりの誰かの背中を押せるような、心を鼓舞できるような、人生に影響を与えられるような、そんなことばが書けるコピーライターを目指していきたいです。

【仕組みのクリエイティブ】【表現のクリエイティブ】
それらはお互いに作用していくものだと思っています。いつか、その両輪が高いバランスで機能しているような企画がつくりだせるように。生活者を本当に動かせるような広告クリエイティブがうみだせるように。
まずはこれからコピーライター1年目、頑張りたいと思います。


有泉 歩美 Ariizumi Ayumi
コピーライター / プランナー
2019年ADK入社。仕組みと表現のプロを目指して、がんばっています。
コンテンツが大好きで、韓流・漫画・世界のリアリティショーなどに夢中です。

AWARD
ヤングカンヌ2023 インテグレーテッド部門 BRONZE /スパイクスアジア出場
ヤングカンヌ2022 インテグレーテッド部門 SILVER
ヤングカンヌ2022 デジタル部門 SHORT LIST
ACC 2022 メディアクリエイティブ部門 / FINALIST FCC賞 2022 / 入賞

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