広告会社に入ったらラジオ番組にレギュラー出演することになった話
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広告会社に入ったらラジオ番組にレギュラー出演することになった話

あの夏、僕はラジオ番組に出て
健康食品を売りまくっていた。

みなさん、ラジオ生コマーシャルってご存じですか?一度はお聴きになったことがあるかもしれません。生放送のラジオ番組に企業の人が出てきて、パーソナリティとやりとりしながら商品を紹介し、最後に電話番号とともに「お電話、お待ちしていま〜すぅ♪」と言うアレです。 

はじめまして。コピーライターの星聡宏と申します。
「ADK CREATIVE MALL」で、「BOLD EXPERIENCE(ボールド・エクスペリエンス)」を掲げる根本ルームに所属しています。ちょっと小難しいですが、「生活者を動かす核となる“トリガーポイント”を見つけ出し、“太くて強いクリエイティブ体験”をつくる。」ってのが「BOLD EXPERIENCE」の考え方です。 

根本ルーム長は言います。

不確かな時代だからこそ、 
太くて強いクリエイティブをつくりたい。
( ̄ー ̄) ドヤッ! と。

コピーライターの僕は思います。
「太くて強い幹をつくる」それは「言葉」が得意とすることなのではないか。 (アートディレクター出身の根本ルーム長には申し訳ないのですが...) 

このnoteでは「言葉」にまったく興味がなかった僕が、どうしてそう思うようになったのか。そして「不確かな時代」のコピーの役割について、お話したいと思います。 

ラジオショッパーからはじまった、
僕のクリエイティブ人生。

広告会社に入って5年目。僕は営業として、とある健康食品会社を担当していました。月に50本ほどあるラジオ生コマーシャルの制作進行をするのが日課。原稿はフリーのライターさんに頼んでいたのですが、3分の新作原稿を毎週5本つくらなくてはならず、これがけっこうタイヘンなんですね。

ライターさんから上がってきた原稿を商品特性やクライアントさんのオーダーを意識して、お戻しして、また上がってきたものをチェックして、たまにライターさんからブツブツ言われたり…
これなら最初から自分で書いたほうがはやいし、ストレスないんじゃないか!そう勘違いしたのがすべてのはじまりでした。

ある日、自分でラジオ原稿を書いて先方に提案しにいくと、思いのほか評判が良かったんですね。で、1ヶ月ほど経って、じつは自分で書いていることを告白すると宣伝部長が何を思ったか言い放ったんです。 

「キミ!出ちゃいなよ!」

その方曰く「自分で書いた原稿でラジオに出れば、臨場感を肌で感じることができて、もっといい原稿が書けるようになる」と。それはほぼ〝命令〟だったので断れるわけもなく、僕は自分で書いた原稿を手に、ラジオショッパーとしてデビューすることになったのです。 

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人生はじめてのラジオ出演。電話が鳴らなかったらどうしようという不安をかき消すかのごとく思いっきりハイテンションで臨みました。そして最後にお決まりの「お電話、お待ちしていま〜すぅ♪」の掛け声を、これでもか!と気合の入った声量で言い放ったんです。

結果、注文電話はかなり鳴りました。幸か不幸か、僕はそれから定期的にラジオショッパーとして出演することに。土日の朝も出演番組があったので週末の深酒も避け、週に十数本の〝レギュラー番組〟をこなしていきました。 

そして、反応がよかった回は、なぜよかったのか仮説を立て、構成やセリフを改良していったんです。そして、僕はついに、その会社での1日の受電数の記録を塗り替えることができたのです。

クライアント先に常駐することになり、「先生」と呼ばれ、ラジオ局からもちょくちょく接待を受け、社員のみなさん向けにセミナーも開きました。「言葉のいいまわし」や「言葉のねらい」を変えるだけで電話の鳴る数が変わる。僕はこの経験で「言葉」というものが持つパワーを実感することができました。そんなラジオでの経験で得た〝伝え方のコツ〟みたいなものをちょっとだけご紹介したいと思います。 

みんなじゃなくて、ひとりに伝える。

ラジオに出演する際はパーソナリティの方とお話するのですが、僕は頭の中にいる「北海道在住 近藤チエさん(72)」に向かって話をしていました。
それはときに「福岡在住 石井千代子さん(59)」だったり「長野在住 森本久子さん(65)」だったりします。ラジオは番組によっては数十万人の方が聴いています。なので不特定多数の〝大衆〟に向かってメッセージしてしまいそうなのですが、これだと受電数が伸びません。たくさんの人に伝えるのではなく、たったひとりに伝える。そんな気分で伝えます。 

これはテレビCMをつくるときもおなじです。伝達手段が増えたとはいえ、まだまだテレビはもっともマスな広告。
それでも大勢ではなく〝たったひとりに伝える〟気分で企画する。
すると〝誰に〟〝どんな人格が〟〝どのような口調で〟伝えるのか。ということが少し輪郭を帯びてきます。メッセージの深度も増します。
「みんなに伝わる」=「誰にも深く伝わらない」
と思うくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

もっとも個人的なことが、もっともクリエイティブなこと。 

これはポン・ジュノ監督がアカデミー賞の受賞式で口にした言葉です。
(もともとは彼が尊敬するマーティン・スコセッシ監督の言葉だそうです。)もちろん、当時はこの言葉を知りませんでしたが、個人的な体験から話をはじめたほうが受電数は伸びることを肌で感じていました。
「自分が今日したこと」「自分が住む街のできごと」「自分のおばあちゃんの話」、入りはかならず個人的な話から。いきなり商品の話は絶対にしません。当時の僕は20代で、リスナーの方たちのお孫さんとおなじ年代。もしかしたら、お孫さんから見た〝自分たち像〟に共感してくれたのかもしれません。 

ちなみにこの〝共感〟って言葉。ホントに打ち合わせで頻発するんですよね…「このコピーには共感がないね」「もっと共感させるコピーないの?」「共感がなければコピーじゃない!」などなど。
共感とは受け手に、こちらの言い分を納得してもらい、好きになってもらうための回路をつくること。そのために「個人的体験アプローチ」は効果的な手段です。

クリエイティブに来て間もない頃、先輩に「思い出泥棒」という言葉をいただきました。それは、コピーというのは個人的な経験からしか生まれない。でも、自分の体験だけでは足りない。だから、親や友人、ふだん自分以外の人と接していてこれぞ!と思う体験談があったら、こっそり懐に忍ばせろ。その体験の中に不特定多数が共感できる要素があればコピーになるぞ、と。これは今も、とても大切にしている言葉です。

話が長くなってしまいました。偉大な監督たちのお言葉を引き合いに出したことを後悔しかけているのですが、お伝えしたかったことは、個人的なことから入るアプローチは、共感を生み、結果、商品を好きになってもらえる(可能性が高い)ということ。なので、僕は今日も誰かの話を聞きながら、せっせと思い出を盗ん……拝借しているのです。

いい答えは、いい問いから生まれる。 

僕は打ち合わせでよく質問をします。割としつこくするので、ちょっと嫌われているかもしれません。クライアントさんが思っていることをとことん聞き出す。消費者調査で、ユーザーの言葉にできない感覚を引き出す。そうやって質問をすることで、その後のヒントになることがたくさんあると思っています。

そんな考えにいたったのもラジオ出演がきっかけです。
ある日、担当する健康食品のユーザーインタビューに参加する機会がありました。何か受電数を伸ばすヒントがあるかもしれないと思ったからです。(もうホント、受電の魔物に取り憑かれてました)

そこでは調査会社の方から「商品に関する質問」がされるのですが、なかなか盛り上がりません。ふと僕が「最近、ハマっていること」や「今後してみたいこと」を聞くと、今までの静寂がなんだったのかというくらい、おしゃべりになられるんですね。「主人と山登りにハマっている」「いつか豪華客船で世界一周したい」とか。
で、話をひたすら聞いていると、ぽつりぽつりと商品名が出はじめてくる。「だから、この商品買ってるのよねぇ」とか「この商品を試してから週末が楽しみになった」などなど。

僕は、衝撃を受けました。なぜなら、ずっとターゲットの人たちは、健康食品で「健康になりたい」「長生きしたい」と思っていると考えていたからです。たしかにその側面がないわけではないです。でも、そのインタビューでは「健康」とか「長生き」みたいな言葉は出てきませんでした。そこにあったのは、もっと具体的な目標や日常。「いつかあんなことがしたい!」「いつまでもこんなことをしていたい!」という願望です。
この日から僕のラジオ原稿が変わったのは言うまでもありません。書くことは、聞くことからはじまる。むしろコピーライターの仕事って聞くことなんじゃないか、とあらためて思う、今日この頃です。

ラジオショッパー卒業。はれてコピーライターに。

で、僕は言葉への興味(もしくは一生ラジオショッパーとして生きていくことへの不安)をきっかけに試験を受けてクリエイティブへ異動することに。
いま携わっている仕事のジャンルは、テレビ・デジタル・グラフィックと多岐にわたりますが、 どんな切り口だとハッとさせられるのか。どういう言い方だとグッとくるのか。 コピーや企画を考えるとき、ラジオでの経験が大きく影響しているように思います。(〝出ちゃいなよ宣伝部長〟のおかげです。ありがとうございました!)

【ACジャパン / 日本動物愛護協会】

最近手がけた仕事をひとつご紹介させてください。この仕事は、クリエイティティブ・ディレクターとして関わった仕事です。ペットの「衝動買い」と「安易な販売」の防止。それが今回のお題でした。
とりかかってみると、これがなかなか難しい。伝え方によってはペットビジネスを否定しかねない表現になってしまいます。
とはいえ、遠回しな表現にして「何が言いたかったんだろう?」となるのも避けたい。 

どんなメッセージで、どんな伝え方がいいのだろう。どこから言い過ぎで、どこからが言い足りないのか。まるでチキンレースのように絶妙な部分を探ることに注力しました。

そして、もうひとつ企画をするときに意識したのは、社会にとってこの広告がどういう意味を持つか、ということ。
緊急事態宣言による巣ごもりでペットの需要が増えている一方、例年に増して飼育を放棄する人が増えているそうです。
そういう社会的背景がある中で、どのくらいの「声の大きさ」で、どのような「声色」で、どんな「ひとり」にメッセージするのが適切なんだろう。たくさん悩みました。で、できたのが、この広告です。

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みなさんは、どんな印象を持たれたでしょうか?「言い過ぎでしょ!」「このくらい言わないと届かないよ」いろんな意見があると思います。
この仕事で僕らが大切にしたことは、この広告があるのとないのとで、どう世の中が変わるのか。「衝動買い」と「安易な販売」によって少なからず、不幸な命が生まれてしまっているという事実を伝えたい。そのためには、少し大きな声で、きっぱりと言う。ペットショップで一目惚れした人が、この広告を思い出す。〝本当に飼えるのか〟じっくり検討するきっかけになる。そうでなければ意味がないと思いました。
コピーは同じことを言っていても「言葉の向かい先」「声の大きさ」「声色」でぜんぜん印象が変わってきます。クライアントさんや世の中にある、抽象的な想いや気分を、適切な伝え方で具体化してあげる。それが大切であり、とても難しいことだと思っています。

不確かな時代には、「具体化」が武器になる。

いきなりですが、言葉って「具体的」だなって思うのです。
たぶん伝達手段の中で、いちばん具体的なんじゃないでしょうか。

たとえば「咲き誇った花」の写真を見せられたとします。それを見て「美しい」というメッセージを受け取る人もいれば、「栄華」みたいなイメージを抱く人、もしくは単に「花」と感じるだけの人もいるかもしれません。けれど、そこに「美しい」と言葉で書かれていたらメッセージはグッと具体的になりますよね。

根本ルーム長は、言います。

不確かな時代だからこそ、
太くて強いクリエイティブをつくりたい!!

( ゚Д゚)ゴルァ!! と。

不確かな時代ってなんでしょう?時代はいつだって不確かな気もします。でも、もしかしたら今の「不確かな時代」とは「抽象と多様」の時代なのかもしれません。時代の流れが速すぎて、新しい概念が生まれては消えていく時代。生活スタイルや価値観が広がって人々の受け止め方が多様になった時代。そんな現代で「具体化」が得意な「言葉」というものは、大きな武器になるような気がします。

新しい概念には、「言葉」が最初にたどり着く。

まだ世に広まっていない価値観。まだ語られていない組織のビジョン、まだ生まれていないプロダクト、まだ誰も知らないサービス。新しい何かが生み出されるとき、そこにちゃんとした言葉があると、グッと具体性が増す。輪郭を帯びてくる。人格をまとうことができる。そうなれば、ものごとがいい方向に進むと思うのです。そのとき、コピーライターは、きっとお役に立てるはずです。

ずいぶんと長くなってしまいました。言葉にまったく興味がなかった僕が、いっちょまえに言葉について語っている。ラジオショッパーになる前の僕がこのnoteを読んだら、どんなに驚いたことでしょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
根本ルームの「BOLD EXPERIENCE」に興味を持たれた方、「言葉」の可能性を感じた方、ぜひお仕事、ご相談ください。


「お電話、お待ちしていま〜すぅ♪」


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星聡宏 / コピーライター
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